南方さび病に強くTDN多収の晩播・夏播き用トウモロコシ新品種「なつむすめ」

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要約

トウモロコシ新品種「なつむすめ」は、晩播・夏播き用品種で、南方さび病に極めて強く、耐倒伏性に優れ、乾物収量および乾雌穂重割合が高く、TDN含量、TDN収量ともに高い。

  • キーワード:トウモロコシ、晩播、夏播き、南方さび病抵抗性、高TDN、雌穂多収
  • 担当:九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
  • 連絡先:電話0986-24-4275
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

暖地では、飼料用トウモロコシは夏作の基幹自給飼料として、春播きだけでなく、イタリアンライグラスの収穫後に晩播で栽培され、 また二期作の二作目として夏播きでも広く栽培されている。晩播・夏播き栽培では、南方さび病による雌穂収量の減少や茎葉のTDN含量低下および倒伏により TDN収量が減収する。そのため、南方さび病に強く雌穂収量と茎葉TDN含量が高く、九州地域での晩播・夏播き栽培に適した品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「なつむすめ」は晩播デント種集団由来の自殖系統「Mi91」を種子親とし、在来フリント種自殖系統「Na50」を花粉親として育成された単交雑一代雑種である。
  • 晩播栽培での絹糸抽出期は、「3470」および「KD850」より1日遅く、「SH9904」より1日早い。夏播き栽培での絹糸抽出期は、「SH9904」と同じである(表1)。
  • 晩播栽培における乾物総重、乾雌穂重および乾雌穂重割合は、「3470」「SH9904」および「KD850」より高い。総体の推定TDN含量およびTDN収量は、「3470」「SH9904」および「KD850」より高い(表1、図1)。
  • 夏播き栽培における乾物総重は、「SH9904」並である。乾雌穂重と乾雌穂重割合は「SH9904」より高い。総体の推定TDN含量およびTDN収量は、「SH9904」より高い(表1)。
  • 南方さび病抵抗性は「3470」「SH9904」および「KD850」より強い(図2)。ごま葉枯病抵抗性は、「3470」並かそれより強く、「SH9904」および「KD850」並かそれよりやや弱い(表2)。
  • 耐倒伏性は「3470」「SH9904」および「KD850」並かそれより強い(表2)。
  • 4月上旬に種子親と花粉親を同時播種した場合、種子親の絹糸抽出期と花粉親の雄穂開花期はほぼ合致し、雌雄畦比3:1での採種量は30.8kg/a程度である。

成果の活用面・留意点

  • 九州地域の晩播栽培およびワラビー萎縮症が発生しない地域における夏播き栽培に適する。栽植密度は650~700本/a程度とする。普及見込み面積は1,000ヘクタールである。
  • 4月~5月中旬までの春播き栽培には適さない。

具体的データ

表1 「なつむすめ」の晩播栽培および夏播き栽培における主要特性

 

図1 晩播栽培における乾物総重の「3470」比図2 南方さび病罹病程度

 

表2 「なつむすめ」のごま葉枯病抵抗性および耐倒伏性

 

その他

  • 研究課題名:周年放牧による放牧(肥育)期間の延長と自給飼料資源を活用した肉用牛の育成・肥育システムの開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:交付金(基盤)、委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2001~2007年度
  • 研究担当者:澤井 晃、村木正則、伊東栄作、江口研太郎