LAMP法を利用したカンキツグリーニング病の迅速診断のための無磨砕DNA抽出法
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要約
アルカリ抽出法は、カンキツグリーニング病の迅速診断に適した無磨砕DNA抽出法である。LAMP法と組み合わせることにより、短時間で高感度かつ高精度の診断が可能となる。
- キーワード:カンキツグリーニング病、LAMP、迅速診断
- 担当:果樹研・カンキツグリーニング病研究チーム(九沖農研・暖地施設野菜花き研究チーム)、沖縄農業研究センター・病虫管理技術開発班
- 連絡先:電話096-242-1150
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
近年、沖縄県および鹿児島県奄美諸島の一部のカンキツ生産地において、カンキツグリーニング病による被害が広がっている。本病病 原体は難培養性細菌であること、病徴が要素欠乏症と類似していること等から、感染の正確な診断にはPCR(polymerase chain reaction)あるいは LAMP (Loop-mediated isothermal amplification)法による遺伝子診断法が利用されている。感度や精度を保ちつつ、さらに簡便化を図るため、検体を磨砕しないでDNAを抽出 し、LAMP法により診断する方法を開発する。
成果の内容・特徴
- 新規に考案した無磨砕のDNA抽出法(以下、アルカリ抽出法とする)(図1)により、検体を磨砕しないでDNAを抽出できる。抽出したDNAはDNA増幅試薬キット(栄研化学株式会社)と蛍光・目視検出試薬(栄研化学株式会社)またはリアルタイム濁度計測装置LA-200(テラメックス株式会社)を用いたLAMP法により60分で診断できる(図2)。全作業行程に要する時間は約90分である。
- カンキツグリーニング病感染葉よりアルカリ抽出法により調製したDNAをLAMP法の鋳型として用いた場合、増幅効率の目安となる濁度の上昇が、市販のDNA抽出キットを用いて調製したDNAとほぼ同じである(図3)。
- 1本のサンプルチューブに直径6mmの葉片を5枚まで入れることができる。そのうち、1枚でもカンキツグリーニング病に感染していれば、LAMP法により検出される(表1)。
- 本法によるカンキツグリーニング病病原菌の検出感度はPCR法と比較して同等以上である(データ省略)。
成果の活用面・留意点
- 本病病原菌は、カンキツ樹体内で偏在することが知られていることから、擬陰性を避けるために複数箇所から採取した葉を用いてDNA抽出を行うことが望ましい。
- LAMP反応に用いる恒温槽(インキュベーター)は市販のサーマルサイクラー、水相または気相のインキュベータ等が利用可能 であるが、装置によっては反応液の蒸発を防ぐためにミネラルオイルを重層する必要がある。乾熱滅菌器等の温度制御が不十分な機器は反応が安定しない場合が あるため、使用には適さない。
- 擬陽性の原因となるため、LAMP反応後のチューブは開封せず、そのまま破棄すること。
- アルカリ抽出法により調製したDNAはPCRの鋳型としては不適当な場合があるため、PCRには使用しないこと。
- アルカリ抽出法とLAMP法を組み合わせたカンキツグリーニング病診断キットは、株式会社ニッポンジーンより入手可能である。
製品情報のアドレス:http://nippongene-analysis.com/Kankitsu/kankitsu-mf.htm
具体的データ



その他
- 研究課題名:気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
- 課題ID:215-a
- 予算区分:交付金、高度化事業
- 研究期間:2006~2007年度
- 研究担当者:奥田充、河野伸二、村山裕子、岩波徹