アゼガヤの生育に対する湛水及びシハロホップブチルの効果

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要約

田畑共通雑草アゼガヤは2葉期までに湛水された場合、生育が極端に抑制される。3葉期以降は水没しても旺盛な生育を示す場合が多い。シハロホップブチル粒剤は草丈15cm程度まで、シハロホップブチル乳剤は草丈20cm程度までの個体を完全枯殺できる。

  • キーワード:アゼガヤ、耕種的防除、除草剤、水田雑草、湛水
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム
  • 連絡先:電話0942-52-3101
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、共通基盤・作付体系・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

イネ科の一年生雑草アゼガヤは、水田・畑地双方に発生する田畑共通雑草である。アゼガヤは常時湛水された条件での発生はほとんど 認められないとされ、これまでは主に畑地や直播水稲で多発生して問題となってきた。しかしながら、近年北部九州における水田で発生が目立ってきており、そ の大半は湛水管理を基本とする移植水稲での発生である。そこで、移植水稲においてアゼガヤが多発生する要因を探るため、落水条件で発生したアゼガヤの湛水 に対する適応性を検証する。また、水田内に生育したアゼガヤの防除体系を確立するため、アゼガヤ防除に有効であるとされるシハロホップブチルの殺草効果を 評価する。

成果の内容・特徴

  • アゼガヤは発生後から2葉期までに湛水された場合、完全には死滅せずに少なくとも1カ月間は水中での生存が可能であるが、その後の生育は極端に抑制される(図1)。
  • 3葉期以降は深さ5cm程度の湛水によって水没しても、旺盛な生育を示す場合が多い。しかしながら、3葉期程度の個体であれば、湛水深を深くする(8cm程度)ことで生育を強く抑制できる(図1)。
  • シハロホップブチルは生育期のアゼガヤに対して殺草効果を有し、乳剤(EW)は草丈20cm程度までの個体を完全枯殺できる(表1、2)。
  • シハロホップブチル粒剤(1kg粒剤)は、草丈15cm程度までの個体を完全枯殺できるが、それ以上に生育した個体に対しては殺草効果が変動し(表1、2)、最上位葉は褐変・枯死するものの、分げつの発生による再生個体が認められる。

成果の活用面・留意点

  • アゼガヤが蔓延した水田での防除体系策定の参考とする。
  • アゼガヤには種内変異として「ほふく型」と「叢生型」が確認されており、本研究では水田に発生が多い「ほふく型」を用いた。
  • シハロホップブチルは、粒剤(有効成分含有率1.8%)では湛水処理(処理量100g/a)、乳剤(有効成分含有率30%)では落水茎葉処理(処理量10ml/a、散布水量7~10L/a)とする。乳剤によって完全枯殺できる生育量の限界確定には、さらに検討を要する。

具体的データ

図1 アゼガヤの草丈に及ぼす湛水の影響

 

表1 アゼガヤに対するシハロホップブチルの殺草効果(2005年)表2.

 

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:高度化事業(有明海クリーク)、日植調研究調査啓発事業
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:住吉正、小荒井晃、保田謙太郎
  • 発表論文等:住吉ら(2007)雑草研究 52(4):185-189