西南暖地で早植え栽培したイネは葉鞘+茎の推定TDNが高い
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要約
早植え栽培したイネは、普通期栽培したイネに比べ、穂重割合は低いが、葉鞘+茎の細胞内容物(OCC)が高いため推定可消化養分総量(TDN)も高く、植物体全体の推定TDNが同程度以上になる。
- キーワード:飼料イネ、推定TDN、作期、早植え栽培
- 担当:九州沖縄農研・イネ発酵TMR研究チーム
- 連絡先:電話0942-52-0670
- 区分:九州沖縄農業・水田作、共通基盤・総合研究(飼料イネ)、作物・稲
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
西南暖地では、飼料イネはイタリアンライグラス-飼料イネ(早植え栽培、5月下旬移植)やコムギ(あるいはオオムギ)-飼料イネ
(普通期栽培、6月下旬移植)などの作付け体系で栽培されている。飼料イネには、高乾物収量に加え、高TDNが求められている。一般的に、穂の推定TDN
は葉身および葉鞘+茎の推定TDNに比べ高く、品種間では穂重割合の高い品種ほど推定TDNが高いと考えられている。また早植え栽培したイネは、普通期栽
培したイネに比べ、乾物収量は高いが、穂重割合が低いことが明らかになっている。そこで、早植え栽培したイネは、普通期栽培したイネに比べ、推定TDNが
低いのか否かを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 品種間の差異をみると、穂重割合の差が大きい年では、穂重割合の高い品種ほど推定TDNも高い(図1)。
- 早植え栽培したイネは、普通期栽培したイネに比べ、穂重割合が低いが、植物体全体の推定TDNが同程度以上である(図2)。
- 植物体各部位の推定TDNをみると、早植え栽培したイネは、普通期栽培したイネに比べ、葉鞘+茎の推定TDNが高い(図2)。
- 葉鞘+茎の推定TDN関連成分をみると、早植え栽培したイネは、普通期栽培したイネに比べ、有機物(OM)およびOCCが高く、細胞壁成分(OCW)および低消化性繊維(Ob)が低い(図3)。
- 葉鞘+茎のOCCと関係があると考えられる非構造性炭水化物(NSC)をみると、早植え栽培したイネは、普通期栽培したイネに比べ、NSCが高い(図3)。
- 以上のことから、早植え栽培したイネは、普通期栽培したイネに比べ、葉鞘+茎のNSCが高いためOCCも高く、葉鞘+茎の推定TDNが高くなる(図2、3)。
成果の活用面・留意点
- 飼料イネの高品質栽培を行うための基礎的知見となる。
- 推定TDNは、酵素分析法でOCW、Ob、CA(灰分)を測定後、推定式TDN=-5.45+0.89(OCC+Oa)+0.45OCW、OCC=100-(OCW+CA)、Oa=OCW-Ob、OM=100-CAで算出した(服部ら 2005)。
- NSCは、重量法で測定した(大西・堀江 1999)。
具体的データ



その他
- 研究課題名: 暖地における飼料イネ等の発酵TMR生産技術の開発による地域利用システムの構築
- 課題ID:212-b
- 予算区分:基盤、委託プロ(ブラニチ、えさプロ)
- 研究期間:2003~2007年度
- 研究担当者:中野洋、森田敏、服部育男、佐藤健次
- 発表論文等:Nakano H. et al. (2008) Field Crops Res. 101 (1-2): 116-123.