熱帯牧草ブリザンタ(MG5)の乾物収量および栄養収量

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要約

熱帯牧草ブリザンタ(MG5)は奨励品種(沖縄県)であるローズグラス(カタンボラ)に比べ粗蛋白質およびOa+OCC含量が高く、Ob含量は低く、TDN、DCPとも高い。乾物収量も4.4t/10aとローズグラス(2.7t/10a)より多収である。

  • キーワード:暖地型牧草、乾物収量、ブリザンタ、栄養価
  • 担当:九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-7757
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

亜熱帯地域の沖縄県ではこの10年間で肉用牛の飼養頭数が倍増したが、土地基盤の弱い沖縄では頭数増加に見合った牧草量が確保で きないため、輸入牧草を購入する傾向にありコスト高が懸念されており、既存の草種より高収量で高品質な牧草の導入・利用が強く要望されている。そこで、近 年、ブラジルで育成され高品質で高収量が見込まれる熱帯牧草ブリザンタ・MG5(Brachiaria brizantha cv. MG5、以下ブリザンタ)について、乾物収量と栄養価を沖縄県の奨励品種であるローズグラス・カタンボラ(Chloris gayana cv. Katambora、以下ローズグラス)を対照に検討する。

成果の内容・特徴

  • 国頭マージ土壌(沖縄県)で栽培されたブリザンタおよびローズグラスの成分組成を比 較すると、ブリザンタの粗蛋白質含量は 12~16%(平均14.7%)で、Oa(高消化性繊維)+O CC(細胞内容物質)含量は32~38%(平均34.9%)で推移し、ローズグラスの粗蛋 白質含量 9~13%(平均11.9%)、Oa+OCC含量23~30%(平均26.2 %)に比べ常に高い値で推移する。 Ob(低消化性繊維)含量 は、ブリザンタ54~60% (平均58.0%)、ローズグラス60~70%(平均66.0%)とブリザンタが常に低い値で推移する(図1)。
  • 栄養価について、ブリザンタのTDN含量は62~64%(平均62.8%)で、DCP含量は 9~11%(平均10.2%)で推移し、ローズグラスのTDN含量56~59%(平均57.7%)で、DC P含量6~9%(平均7.6%)に比べ常に高い値で推移する(図2)。
  • 乾物収量はブリザンタは1年目は4293kg/10a、2年目は4497kg/10aであり、ローズグ ラスの1年目2471kg/10a、2年目2941kg/10aに比べ、50~70%高い乾物収量を示す。
  • 栄養収量を比較すると、平均TDN収量はブリザンタは2759kg/10a、ローズグラスは 1560kg/10a、平均DCP収量はブ リザンタは448kg/10a、ローズグラスは205kg/10aとブリ ザンタがローズグラスより高い栄養収量を示し、その差異は、乾物収量の差異より 大 きい(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 栄養価からみて、沖縄地域における肉用繁殖牛(授乳牛)および育成牛用牧草(採草・ 放牧)に向いており、飼料費の削減が期待できる。
  • 播種量は2kg/10aが適量であり、播種時期は沖縄地域においては3月~12月の間、 播種可能である。
  • 施肥量は刈り取り毎にN:P2O5:K2Oの各成分10:6:6kg/10aである。
  • 種子は民間種苗会社より購入可能。

具体的データ

図1 牧草成分の推移

 

図2 乾物収量と栄養価

 

表1 年間乾物収量および栄養収量

 

その他

  • 研究課題名:周年放牧による放牧(肥育)期間の延長と自給飼料資源を活用した肉用牛の育成・肥育システムの開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:高度化(新熱帯牧草)
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:中西雄二、花ヶ崎敬資(沖縄畜研)、幸喜香織(沖縄畜研)、与古田稔(沖縄畜研)、平野 清、小路 敦