貯蔵によるサツマイモ塊根のポリフェノール成分と抗酸化性の変動

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要約

サツマイモ塊根のポリフェノール成分は貯蔵中に増加し、それに伴い抗酸化性も高くなる。また、貯蔵中にカフェ酸スクロースが生成し、「ジェイレッド」では適温貯蔵中に大きく増加する。

  • キーワード:サツマイモ塊根、ポリフェノール、抗酸化性、貯蔵、カフェ酸スクロース
  • 担当:九州沖縄農研・機能性利用研究チーム
  • 連絡先:電話0986-24-4278
  • 区分:九州沖縄農業・流通加工、畑作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

サツマイモ塊根の貯蔵適温は15℃程度であり、低温により生理的障害を受けるため、冬季には貯蔵温度に留意する必要がある。一 方、低温条件で糖含量が増加する特性を活かしてペーストや蒸切干加工では短期間の低温貯蔵を利用するなど貯蔵中の成分変化を効果的に利用することも行われ ている。本研究では、収穫後貯蔵技術によるサツマイモ塊根の機能性増強を目指し、低温および適温貯蔵中のポリフェノール成分および抗酸化性の変動を評価す る。

成果の内容・特徴

  • 貯蔵中に総ポリフェノール含量とDPPHラジカル消去活性は増加する傾向にある。その傾向は「べにまさり」の低温(5℃)貯蔵で顕著である(図1)。
  • 各品種ともクロロゲン酸および3,5-O-ジカフェオイルキナ酸の含有率が高く、貯蔵中にこれらの成分は増加する。適温(15℃)貯蔵では3,5-O-ジカフェオイルキナ酸の増加が大きく、低温(5℃)貯蔵ではクロロゲン酸の増加がより大きい(図2)。
  • 「ムラサキマサリ」の総ポリフェノール含量とラジカル消去活性(図1)、およびカフェ酸誘導体、アントシアニン色価、色素成分割合(データ省略)は低温(5℃)と適温(15℃)どちらの貯蔵でも変動は少ない。
  • 貯蔵中にカフェ酸スクロースの生成が認められ、特に「ジェイレッド」の適温(15℃)貯蔵で増加が大きい(図3)。
  • カフェ酸スクロースのDPPHラジカル消去活性はカフェ酸と同程度である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、サツマイモを扱う食品企業等の参考資料となる。
  • 貯蔵によりサツマイモ塊根の抗酸化性を高め、付加価値を増強できる。
  • 品種により成分変動や腐敗率に違いがあるため、品種ごとに貯蔵期間や温度を制御する必要がある。
  • ポリフェノール含量の増加に伴い調理後に黒変しやすくなる可能性がある。
  • 本研究は早掘栽培に供試した材料で行われたものである。

具体的データ

図1 貯蔵中総ポリフェノール含量(A)とDPPHラジカル消去活性(B)の変化

 

図2 貯蔵中のカフェ酸誘導体の変化

 

図3 貯蔵中(15℃)のカフェ酸スクロース含量の変化

 

図4 カフェ酸スクロース(CA-Suc)のDPPHラジカル消去活性 QA:キナ酸

 

その他

  • 研究課題名:イモ類・雑穀等の機能性の解明と利用技術の開発
  • 課題ID:312-a
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2004-2006年度
  • 研究担当者:石黒浩二、吉元誠
  • 発表論文等:Ishiguro K. et. al. (2007) J. Agric. Food Chem. 55(26):10773-10778