サツマイモ葉ポリフェノール類によるヒトがん培養細胞の増殖抑制効果
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要約
サツマイモ葉に含まれるポリフェノール類であるカフェオイルキナ酸類は胃がん細胞(Kato-III)、大腸がん細胞(DLD-1)、ヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60)の増殖をアポトーシス誘導により抑制する。
- キーワード:がん細胞増殖抑制、サツマイモ葉、ポリフェノール、カフェオイルキナ酸類、がん細胞(Kato-III, DLD-1, HL-60)、アポトーシス誘導
- 担当:九州沖縄農研・九州バイオマス利用研究チーム、機能性利用研究チーム
- 連絡先:電話0986-24-4272
- 区分:九州沖縄農業・流通加工
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
これまでの報告で、サツマイモ葉から3,4,5-トリカフェオイルキナ酸を簡易・安価・大量に精製する方法を確立し、抗変異原性
およびラジカル消去能について他のカフェオイルキナ酸誘導体と比較し、キナ酸に結合しているカフェオイル基の数に比例して活性が強くなることを明らかにし
ている。しかし、抗酸化能力を有する植物は多く、カンショ葉独自の機能性とは言いがたい。よって、さらなる機能性の探索を目的とし、ヒト由来がん細胞の増
殖抑制効果とそのメカニズムについて明らかにする。
成果の内容・特徴
- ヒト胃がん細胞に対して、ジカフェオイルキナ酸(以下、図中では3,4-diCQA、 3,5-diCQA、
4,5-diCQAと略称)は、1000μMでは20-30%の増殖抑制を引き起こし、3,4,5-トリカフェオイルキナ酸(以下、図中では3,4,5-
triCQAと記載)は1000μM、500μMで、80-90%の増殖を抑制する。また、キナ酸、カフェ酸及びクロロゲン酸(以下、図中ではQA、
CA、ChAと略称)の抑制作用は弱い(図1A)。
- ヒト大腸がん細胞に対して、ジカフェオイルキナ酸は、1000μMでは30-40%の増殖抑制を引き起こし、3,4,5-トリカフェオイルキナ酸は1000μM、500μMで、70-80%の増殖抑制作用を示す(図1B)。
- ヒト前骨髄性白血病細胞に対して、3,4,5-トリカフェオイルキナ酸は、1000μM及び500μMで増殖を抑制する(図1C)。
- 3,4,5-トリカフェオイルキナ酸処理後のHL-60細胞では、DNA断片化(図2)及び核の小粒化が観察される(図3)。また、アポトーシス誘導で活性化されるカスパーゼ3酵素活性も上昇する(図4)。これらの結果は3,4,5-トリカフェオイルキナ酸がアポトーシス誘導によりがん細胞の増殖を抑制していることを示唆している。
成果の活用面・留意点
- ヒトがん細胞に対するカフェオイルキナ酸のアポトーシス誘導に関する基礎資料として活用できる。
- これらの結果は培養細胞を用いた研究成果であり、今後は動物実験でのデータ収集が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:イモ類・雑穀等の機能性解明と利用技術の開発
- 課題ID:312-a
- 研究期間:2002~2006年度
- 研究担当者:倉田理恵、吉元 誠、足立勝(宮崎大学)
- 発表論文等:
1)Yoshimoto et al.(2004)POLYPHENOLS COMMUNICATIONS 437-438
2)Kurata et al.(2007)J. Agric. Food Chem. 55:185-190