牛ふん堆肥の施用時期が飼料イネの窒素利用率に与える影響

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要約

飼料イネ栽培前に牛ふん堆肥を施用する場合、熟度にかかわらず施用から代かきの期間が短いほど、作土の土壌溶液窒素濃度が高く、飼料イネによる堆肥中窒素利用率も高い。堆肥を代かき間近に施用することで、窒素肥料の代替として効率良く利用できる。

  • キーワード:飼料イネ、牛ふん堆肥、施用時期、熟度、窒素利用率、窒素溶脱
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム(兼:イネ発酵TMR研究チーム)
  • 連絡先:電話0942-52-0681
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)・水田作、共通基盤・土壌肥料・総合研究(飼料イネ)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

飼料イネ栽培では低コスト化のために、入手しやすい牛ふん堆肥を窒素肥料の代替とすることが望まれる。堆肥の施用量については多 くの試験が行われてきたが、施用時期についてはあまり検討されていない。そこで、熟度が異なる牛ふん堆肥を用いて、窒素肥料の代替として利用するために重 要な飼料イネの堆肥中窒素利用率に与える影響を調べる。

成果の内容・特徴

  • 飼料イネによる堆肥中窒素利用率は、熟成が短くアンモニウム態窒素が多い堆肥で高く、堆肥の熟度にかかわらず施用から代かきまでの期間が短いほど高い(表1,図1)。
  • 堆肥の熟度にかかわらず、堆肥施用から代かきまでの期間が短いほど、特に生育前半において作土の土壌溶液の窒素濃度が高い(図2)。
  • 下層土への窒素溶脱は、堆肥施用から代かきまでの期間が4週間と長い場合に大きく、特に硝酸態窒素が多い堆肥(図表で完熟堆肥)を施用した場合に顕著となる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 窒素肥料の代替として牛ふん堆肥を有効利用するための基礎知見として活用できる。
  • 高温となる1次発酵は病害虫雑草の蔓延防止に必須であることと、生育障害の起きにくさから、1次発酵を経た堆肥(図表で中熟堆肥や完熟堆肥)を利用すべきである。
  • 実際の飼料イネ栽培では、堆肥によるカリウムとリンの過剰施用を防ぐために、堆肥施用量を本試験よりも減らし、必要に応じて窒素肥料の併用も検討すべきである。

具体的データ

表1 施用した牛ふん堆肥の特性

 

図1 飼料イネの堆肥中窒素利用率

 

図2 堆肥施用後における作土と下層土の土壌溶液窒素濃度

 

その他

  • 研究課題名:暖地における飼料イネ等の発酵TMR生産技術の開発による地域利用システムの構築
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:原嘉隆、土屋一成、中野恵子