カラム装置を活用した有機質資材からの肥料成分の短期溶出特性の測定法

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要約

カラム実験装置を活用した測定法により、各種の有機質資材からの肥料成分の短期の溶出特性について、資材間の違いやペレット化による溶出の遅延などを精度良く測定できる。

  • キーワード:有機質資材、肥料成分、溶出、カラム実験装置
  • 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

近年、家畜ふんを原料として、様々な有機質資材が開発されており、化学肥料の代替としての利用が期待されている。これら資材から の肥料成分の初期の溶出特性は、基肥あるいは追肥としての施肥のために重要である。加えて、ペレット化など各種加工に伴う初期の溶出特性把握は、作物・作 型に見合った施肥管理のために重要である。
  初期溶出特性の把握に際し、ほ場で見られるような土・水比(含水比)を保った まま溶出成分を抽出できれば、溶出成分の濃度、時間的変化、資材間差の検出に有効である。この点、培養法では、溶出成分の抽出に際して一時的に土・水比を 変える(水を加える)ため、改良の余地がある。そこで、カラム実験装置を活用した散水抽出による、有機質資材からの初期の肥料成分溶出特性の測定法を開発 する。

成果の内容・特徴

  • 実験装置は、上部に洗浄した粒径約0.2mmの砂と供試資材、下部に砂のみが充填され、フィルターと流出口を装備したカラム、および給水装置から構成される(図1)。 給水装置は、5cmの円内に13本配置した内径0.1mmの注射針により、カラム断面に平均的かつ定常な散水を行うもので流量は可変、フィルターは、カラ ム内の砂に適当な負圧を与えて、不飽和・定常な下方浸透流を形成するためのものである。実験手順は、1)カラム下部に砂を充填、一定流量で給水して定常な 下方浸透流を作る、2)給水を一時停止、上部に砂、供試資材、砂の順に充填(資材は、カラム断面に平均的に充填)、3)直ちに給水を再開して、流出水を連 続的に採水し、成分濃度を分析する(図2)。
  • この装置では、1)給水流量に対応して、カラム上部の充填材(ここでは砂)の含水比がある一定な状態で、供試資材から肥料成 分の溶出が生じる、2)溶出した成分は、不飽和・定常な下方浸透流により流出水として抽出される、3)この結果、カラム上部で溶出した成分の濃度とその時 間的変化は、流出水の成分濃度パターンとしてほぼ正確に測定できる、4)上部の充填材に砂を用いれば、充填材と相互作用のない溶出特性、土壌を用いれば、 相互作用の結果土壌水中に存在する成分組成と濃度を測定できる、5)ペレットなど成型資材の溶出特性を、非破壊で測定できる。
  • 本法によるいくつかの資材からの硝酸態窒素溶出パターンの測定事例を図3に、図3に対応する硝酸態窒素の初期溶出率を表1に 示す。図から、当研究所が開発した窒素付加堆肥と慣行堆肥とで溶出する硝酸態窒素濃度に明確な差があること、窒素付加堆肥のペレット化(5mm)による溶 出の遅延状況、表から、窒素付加堆肥に含まれる硝酸態窒素の初期溶出率はほぼ100%であり、速効性であること、などが明らかである。

成果の活用面・留意点

  • 本測定法において、現地の土壌を充填し、給水速度を現実的な降雨強度に制御すること等により、各種資材の施用後、作物による養分吸収が少ない段階で形成される土壌溶液のイオン組成やECの評価、肥料成分の下方移動の評価などへの応用が可能である。

具体的データ

図1 カラム実験装置図2 溶出特性の測定手順の概要

 

図3 NO3-Nの初期溶出パターンの測定例

 

表1 溶出パターンに基づく初期溶出率の計算値

その他

  • 研究課題名:
  •   有機質資材多投入地帯における合理的な資材施用のための土壌環境指標及び土壌管理技術の開発

  • 課題ID:214-q.2
  • 予算区分:交付金、機構重点強化費(2006年度)、チーム重点強化費(2007年度)、バイオマテリアル(2007年度~)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:原口暢朗、荒川祐介、田中章浩、薬師堂謙一