土壌の硝酸イオン保持能を簡易に測定する添加実験法

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要約

5 mmol L-1の硝酸カリウム溶液の添加実験により、土壌の硝酸イオン保持能を簡易に測定できる。

  • キーワード:硝酸イオン保持能(NHC)、添加実験、AEC、黒ボク土
  • 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

土壌中の硝酸態窒素の挙動は、土壌の陽荷電による硝酸イオン保持能に影響されるため、硝酸イオン保持能の解明は環境保全的な土壌 管理を行う上で重要である。しかし硝酸イオン保持能の目安となる陰イオン交換容量(AEC)は測定に多大な時間と労力を要する上、AEC測定で評価される 全陽荷電が硝酸イオン保持に寄与する訳ではない。そこで硝酸イオンの添加実験により、土壌の硝酸イオン保持能(以下NHC:Nitrate Holding Capacity)を簡易に評価する手法を開発する。AECは一定の平衡条件下での土壌の陰イオン保持容量(ポテンシャル容量)を測定するのに対し、 NHCは土壌が新たに投入された硝酸イオンを追加保持する量(残存容量)を直接測定することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • NHC測定の実験操作について、使用する試薬の種類や固液比、振とう時間などの条件を検討し、5 mmol L-1の硝酸カリウム溶液による添加実験法を策定した(図1)。
  • この方法で用いる溶液の濃度や固液比は、日本の畑土壌における土壌溶液の硝酸イオン濃度や黒ボク土の飽和容水量に近い。また希薄な中性塩溶液を用いるため抽出液pHは土壌pHと大差がなく(表1)、圃場条件に近い状態での測定ができる。振とう時間は30分で充分であり(図2)、オートアナライザーを使用すれば全操作は3時間以内で完了する。NHCが0.1cmolc kg-1以上なら3連の平均誤差が6%以下と、繰り返し精度は良好である。
  • 黒ボク土を主体とする試料19点のNHCとAECを測定すると、両者には密接な正の関係が見られる(図3)。NHCの値は同じ試料のAECに比べて低く、特にAECが0.5cmolc kg-1以上の試料では、NHCはAECの25%~63%の値にとどまる。これはAECの多くが、硝酸以外の陰イオンに競合的に占められているためと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 土壌の硝酸保持容量(残存容量)を迅速簡易に把握する方法として土壌管理に活用する。
  • 測定値の上限(添加した硝酸イオンが全量保持された場合)は0.75 cmolc kg-1である。

具体的データ

図1 NHC測定の実験条件

表1 土壌と測定液のpH 図2 振とう時間と測定値の関係

図3 土壌のAECとNHCの関係

その他

  • 研究課題名:各種土壌における窒素およびカリウムの動態特性に基づく有機質資材の施用基準策定手法の開発
  • 課題ID:214-q
  • 予算区分:基盤、機構重点強化費(2007年度)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:久保寺秀夫