サツマイモ焼酎製造工程で生成するカフェ酸エチル等廃液中の機能性成分

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要約

サツマイモ由来の焼酎廃液(常圧蒸留)には雑草発芽阻害活性をはじめ様々な機能性を持つカフェ酸エチルと2-フランカルボン酸が含まれ、各々発酵過程(二次仕込み)およびもろみの蒸留で生成する。

  • キーワード:サツマイモ、焼酎廃液、カフェ酸エチル、2-フランカルボン酸
  • 担当:九州沖縄農研・九州バイオマス利用研究チーム
  • 連絡先:電話0986-24-4278
  • 区分:九州沖縄農業・流通加工、畑作、バイオマス研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

サツマイモ焼酎廃液(蒸留粕)は焼酎生産量増加に伴いその排出量が増えており、地域資源の有効活用および環境負荷低減の面から、 焼酎廃液はエネルギー、飼料、食品等へ利用されている。しかし、焼酎製造工程で生成する有用成分に関する情報は少ない。そこで、サツマイモ焼酎廃液中の成 分を精査し焼酎製造工程で生成する機能性物質を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • サツマイモ(品種「コガネセンガン」)塊根を主原料とし常圧蒸留を経た焼酎廃液にはポリフェノールの一種カフェ酸エチルと有機酸の一種2-フランカルボン酸(図1)が含まれ、これらは各々焼酎製造工程において塊根投入後の発酵過程(二次仕込み)ならびにもろみの蒸留過程で生成する(図2)。
  • 両物質は、上記廃液からリサイクル施設で生産される資材である濃縮液と乾燥ケーキにも含まれる(図2)。
  • 「コガネセンガン」由来の場合、異なる焼酎メーカーの常圧蒸留廃液にも両物質は含まれる(表1)。サツマイモ品種「ムラサキマサリ」由来の常圧ならびに減圧蒸留廃液にも両物質は含まれるが、減圧蒸留廃液には2-フランカルボン酸は微量しか含まれない(表1)。両物質は麦焼酎廃液(常圧蒸留、1社)には検出されない(表1)。
  • 上記両物質はシャーレ試験において作物よりも雑草に対し強い発芽阻害を示す(表2)。
  • サツマイモ(品種「コガネセンガン」)の塊根に含まれるクロロゲン酸などのポリフェノールは焼酎製造工程で残存するが、その組成は変動する(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • カフェ酸エチルは、試験管レベルでは抗酸化活性がカフェ酸よりも強いこと、動物実験では発癌抑制など、また2-フランカルボ ン酸は、動物実験での中性脂肪などの低減作用や植物に対する病害抵抗性誘導作用が明らかにされている。従って本成果は、サツマイモ焼酎廃液や関連資材から 機能性素材を開発する企業等が活用できる。
  • サツマイモ焼酎廃液とその濃縮液は土壌施用で雑草生育を抑制することが明らかにされており、また濃縮液は宮崎県への届出(名 称:焼酎粕藷蜜)が受理さている特殊肥料でもある。2-フランカルボン酸を土壌施用するとメヒシバの出芽が遅れるが、カフェ酸エチルの土壌施用時の活性は 不明である。
  • カフェ酸エチルと2-フランカルボン酸の毒性に関しては、後者に変異原性がないということ以外、報告がない。後者は指定添加物である。
  • 本成果の数値は焼酎メーカーにより変動する可能性がある。

具体的データ

図1  カフェ酸エチル(左)と2-フランカルボン酸(右)の構造

 

 

図2  「コガネセンガン」由来の焼酎の製造工程におけるカフェ酸エチル(EtCFA)と2-フランカルボン酸(2-FC)の濃度

 

 

表1  異なる来歴の焼酎廃液のカフェ酸エチルと2-フランカルボン酸の濃度(mg/L)

 

 

表2  カフェ酸エチルと2-フランカルボン酸の発芽阻害活性(シャーレ試験)

 

その他

  • 研究課題名:暖地における畑作物加工残さ等地域バイオマスのカスケード利用・地域循環システムの開発
  • 課題ID:411-d
  • 予算区分:委託プロ(バイオリサイクル)、委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2002~2007年度
  • 研究担当者:奥野成倫、小林透、吉元誠
  • 発表論文等:奥野ら(2006) 日本食品科学工学会誌、53(4):207-213