いもの形状や貯蔵性が優れる焼酎用カンショ新品種「サツママサリ」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

カンショ「サツママサリ」は「コガネセンガン」に比べ、いもの外観と貯蔵性が優れ、原料当たりの純アルコール収得量が高い。焼酎は甘くフルーティな香りとすっきりした味が特徴である。サツマイモネコブセンチュウに強い。

  • キーワード:サツマイモ、焼酎用、貯蔵性、線虫抵抗性、醸造適性
  • 担当:九州沖縄農研・サツマイモ育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話0986-24-4274
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

「コガネセンガン」は、その焼酎の独特の風味が実需者から高く評価されており、焼酎用の最適品種として位置づけられている。しかし、いもの表面に条溝(縦溝)が生じて外観が劣り、貯蔵性も悪いため、トリミング時の労力や歩留の低下が課題となっており、線虫にも弱い。実需者からは「コガネセンガン」より栽培特性等に優れた醸造適性の高い品種に対する要望が高まっていることから、いもの外観、貯蔵性や線虫抵抗性に優れた醸造適性の高い品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「サツママサリ」は2000年に焼酎醸造適性が高い「ときまさり」(母)と高でん粉多収の「九州102号」(父)を交配し選抜した系統である(図1)。
  • 貯蔵性は“易”で「コガネセンガン」より優れる。いもの外観は“中”で、条溝は「コガネセンガン」より少ない。食味は「コガネセンガン」と同様に良好である(表1)。
  • 醸造時の原料当たり純アルコール収得量が高い。焼酎の風味は甘くフルーティな香りとすっきりした味が特徴である(表2)。
  • 標準無マルチ栽培での上いも重は「コガネセンガン」より多い。でん粉歩留は「コガネセンガン」より1~2ポイント高い。長期透明マルチ栽培での上いも重は「コガネセンガン」に劣る(表3)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は“強”、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は“中”で、いずれも「コガネセンガン」より優れる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 鹿児島県で普及に移される予定である(当面の普及見込み面積20ha)。
  • 黒斑病抵抗性が“やや弱”であるので、同病害の多発地帯では防除に努める。
  • 栽培条件によっては、裂開が生じる場合がある。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性はSP1レースが優先の試験圃場での結果である。

具体的データ

表1 いもの特性、線虫抵抗性、貯蔵性など

図1 九州153号の塊根

表2 焼酎醸造特性

表3 育成地および鹿児島県における収量性

その他

  • 研究課題名:良食味で加工適性に優れた甘しょ品種の育成と新たな有用特性を持つ甘しょ育種素材・系統の開発
  • 中課題整理番号:311e
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工プロ)
  • 研究期間:2000~2009年度
  • 研究担当者:吉永優、片山健二、甲斐由美、境哲文、中澤芳則、熊谷亨、石黒浩二