低温糊化性でん粉を有するでん粉用カンショ新品種「こなみずき」
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要約
カンショ「こなみずき」はでん粉の糊化温度が一般品種のでん粉より約20°C低い。この低温糊化性でん粉はゲルの離水率や硬度が低く、耐老化性に優れ、高分解性である。いもの収量およびでん粉歩留は「シロユタカ」並で、線虫にも強い。
- キーワード:サツマイモ、低温糊化性でん粉、耐老化性、線虫抵抗性
- 担当:九州沖縄農研・サツマイモ育種研究チーム
- 代表連絡先:電話0986-24-4274
- 区分:バイオマス、九州沖縄農業・畑作、作物
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
カンショでん粉の約8割は異性化糖などの糖化原料に使われており、輸入トウモロコシを原料とする安価なでん粉との競合にさらされている。カンショでん粉の付加価値を高め、食品向けのでん粉需要を拡大することは、カンショを基幹作物とする南九州畑作農業やでん粉産業の活性化にとって重要である。しかし、既存品種のでん粉はバレイショでん粉などに比べると加工適性に特徴がない。そこで、でん粉ゲルの耐老化性が優れた低温糊化性でん粉をもつ高でん粉・多収のでん粉原料用新品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「こなみずき」は2003年に低温糊化性でん粉系統の「99L04-3」(母)と高でん粉・多収の「九系236」(父)を交配し、選抜した系統である(図1)。
- でん粉の糊化温度は「シロユタカ」より約20°C低く、食用品種の「クイックスイート」並である(表1)。この低温糊化性でん粉はでん粉粒の中央に亀裂を有する(図1)。
- でん粉ゲルを冷蔵保存した後の離水率や硬度は「シロユタカ」より大幅に低く、耐老化性に優れたでん粉で、高分解性である(表1)。
- 標準栽培における上いも重およびでん粉重は「シロユタカ」並である。長期透明マルチ栽培では「シロユタカ」に劣る(表2)。
- サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は“強”、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は“やや強”で、「シロユタカ」並みであり、黒斑病にも強い。貯蔵性は“中”で、「シロユタカ」よりやや優れる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 鹿児島県で、でん粉用として普及に移される予定である(当面の普及見込み面積20ha)。
- でん粉の耐老化性を活かして、加工処理しない天然でん粉のままで、わらび餅などのゲル状食品の品質を長期間保持できる。
- 高分解性のでん粉で、糊化時の投入エネルギーが少ない特性は糖化原料としての長所になる。
- 糊化温度の低いでん粉を含むので、高温時に収穫したいもは傷みやすく、早掘栽培では減収しやすいので、早掘栽培は避ける。
- サツマイモネコブセンチュウ抵抗性はSP1レースが優先の試験圃場での結果である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:バイオエタノール原料としての資源作物の多収品種の育成と低コスト・多収栽培技術等の開発
- 中課題整理番号:224a.3
- 予算区分:基盤、委託プロ(バイオマスプロ)
- 研究期間:2003~2009年度
- 研究担当者:吉永優、片山健二、甲斐由美、境哲文、中澤芳則