セジロウンカの加害でイネに誘導される白葉枯病抵抗性にはヒドロペルオキシドリアーゼが関与する

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要約

セジロウンカが加害したイネでは病害抵抗性関連遺伝子のうちヒドロペルオキシドリアーゼ2遺伝子 (OsHPL2 )が強く誘導される。OsHPL2 とその産物である青葉アルデヒドが白葉枯病に対する抵抗性に関与している。

  • キーワード:セジロウンカ、誘導抵抗性、ヒドロペルオキシドリアーゼ、青葉アルデヒド
  • 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7731
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫、共通基盤・病害虫
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

セジロウンカの吸汁加害を受けたイネでは、イネの重要病害であるいもち病(Kanno et al., 2005;Satoh et al., 2005)や白葉枯病(九州沖縄農業研究成果情報第19号)に対する抵抗性が誘導される。しかし、白葉枯病に対する抵抗性が他のウンカ種の加害でも誘導されるか、また、イネ体内における抵抗性誘導メカニズムについては不明である。そこで、白葉枯病に対する誘導抵抗性発現に重要な働きをするイネの遺伝子や抗菌物質を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 白葉枯病に対する抵抗性の誘導はセジロウンカの加害によってのみ認められる(図1)。
  • マイクロアレイ解析から、セジロウンカが加害したイネでは病害抵抗性関連遺伝子のうちヒドロペルオキシドリアーゼ2遺伝子 (OsHPL2 )が強く誘導される。(データ略)。
  • OsHPL2 を過剰発現させた組換体イネには白葉枯病に対する抵抗性の誘導が認められる(図2)。
  • OsHPL2 によって合成される青葉アルデヒドはセジロウンカの加害を受けたイネのみ多く生成される(図3)。また,青葉アルデヒドを蒸気処理したイネでは、白葉枯病の病斑長が抑制される(図4)。

成果の活用面・留意点

  • プラントアクチベーター(病害に対する防御機構を活性化させる薬剤)等の新たなイネ病害の防除剤の開発や、病害に強いイネを作出する際の基礎データとなる。

具体的データ

図1 セジロウンカ及びトビイロウンカの加害を受けたイネにおける白葉枯病の病斑長

図2 ヒドロペルオキシドリアーゼ2遺伝子(OsHPL2)過剰発現体イネにおける白葉枯病の病斑長

図3 セジロウンカ及びトビイロウンカの加害を受けたイネに含まれる青葉アルデヒド量

図4 青葉アルデヒドに暴露したイネにおける白葉枯病の病斑長

その他

  • 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
  • 中課題整理番号:214h
  • 予算区分:科研費、基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:真田幸代、佐藤雅(横浜植防)、五味剣二(香川大)、小澤理香(京都大)、松村正哉、菅野紘男、高林純示(京都大)
  • 発表論文等:Gomi K. et al. (2010) Plant J. 61: 46-57.