小穂および穂軸の褐変によるコムギの赤かび病進展抵抗性の評価
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要約
開花期のコムギの切り穂の小花に赤かび病菌分生胞子を接種し、高湿度恒温条件で発病を促すことにより、小花から穂軸への褐変の拡大程度から赤かび病進展抵抗性を評価することができる。かび毒蓄積性には初期感染抵抗性よりも進展抵抗性が影響する。
- キーワード:コムギ、赤かび病、進展抵抗性、穂軸褐変、かび毒(デオキシニバレノール)
- 担当:九州沖縄農研・筑後研究拠点・赤かび病研究チーム
- 代表連絡先:電話0942-52-3101
- 区分:九州沖縄農業・水田作、作物
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
コムギの赤かび病抵抗性は初期感染に対する抵抗性、感染後の進展に対する抵抗性、かび毒蓄積に対する抵抗性に分類される。抵抗性遺伝資源である「蘇麦3号」等が有する進展抵抗性は重要な抵抗性タイプと考えられており、コムギ品種の抵抗性を強化する上でその評価は重要である。そこで、赤かび病進展抵抗性を効率的に評価する手法を確立するとともに、かび毒蓄積に対する感染抵抗性と進展抵抗性の影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 開花期の切り穂の小花に赤かび病菌分生胞子懸濁液を注射接種した後、気温20°C、相対湿度95 ± 3%の条件で発病を促すと、褐変病斑は接種した小花、小穂軸を経て隣接する小花、さらには穂軸に進展する。赤かび病菌の強病原性菌(MAFF240559)では接種1週間後、弱病原性菌株(MAFF101551)では接種2週間後の病変の進展程度を0から9のスコアで評価し、進展抵抗性とする(図1)。
- 蘇麦3号やそれに由来する抵抗性中間母本および温暖地以西の主要なコムギ品種・系統の進展抵抗性を評価したところ、有意な品種・系統間差異が認められ、蘇麦3号由来の品種・系統は進展抵抗性が優れる(表1)。一方、噴霧接種7日後の感染小花割合で評価した初期感染抵抗性(罹病スコア)では、「蘇麦3号」由来の品種・系統とその他の品種・系統の間に有意な差異は認められない。
- かび毒蓄積性は初期感染抵抗性と有意な相関関係を示さないが進展抵抗性と有意な相関関係を示し、かび毒蓄積性には初期感染抵抗性よりも進展抵抗性が影響する(表2)。
成果の活用面・留意点
- 本検定法は赤かび病抵抗性およびかび毒低蓄積性系統の選抜に活用されている。
- 本評価法は従来の圃場検定やポット検定等と比較して短期間、省スペースで判定できることから、多量の育成材料等について進展抵抗性の選抜を行う際に有効である。
- 進展抵抗性とかび毒蓄積が一致しない品種・系統が稀に認められるため、最終的にかび毒低蓄積性の品種・系統を選定する場合、進展抵抗性が優れた材料についてもかび毒濃度を確認する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:かび毒汚染低減のための麦類赤かび病防除技術及び高度抵抗性系統の開発
- 中課題整理番号:323a
- 予算区分:実用技術(18036)
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:久保堅司、河田尚之、小田俊介、中島隆
- 発表論文等:Kubo and Kawada (2009) Breed. Sci. 59: 261-268