糸黒穂病害を回避可能な高消化性晩生ソルガム新品種「九州交3号」

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要約

ソルガム新品種「九州交3号」は、高消化性遺伝子bmr-18を持つ晩生のスーダン型ソルガム品種で、出穂前の収穫でも乾物収量、推定TDN含量が高く、出穂前に収穫することで穂に発生する主要病害糸黒穂を回避できる。

  • キーワード:ソルガム、糸黒穂病、高消化性、晩生
  • 担当:九州沖縄農研・バイオマス・資源作物開発チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7755
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

2004年に大分県のソルガム栽培農家において、ソルガム糸黒穂病が国内で初めて確認された。本病は、穂に発生し、胞子の飛散によって蔓延の恐れがあることから、病気の拡大防止を目的として出穂前に収穫できる品種の開発が要望された。これに対応するために、年2回刈り収穫ができ、出穂前の収穫でも乾物収量、TDN含量が高いスーダン型ソルガム品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「九州交3号」は子実型ソルガムの細胞質雄性不稔系統「JNK-MS-6A」を種子親とし、スーダングラス自殖系統「JK2」を花粉親として育成とする単交雑一代雑種である(写真1)。
  • 1番草の出穂期は、4月28日播種で「SSR4」より10日遅く、5月14日播種で「SSR4」より1ヶ月遅く(表1)、2番草の出穂期も「SSR4」より10日遅い(表2)。そのために、従来の品種に比べて出穂が遅く、出穂前の収穫で胞子による病害の蔓延を回避することができる。
  • 大分県での年間乾物収量は、「SSR4」並である(表2)。九州沖縄農研(育成地)の年間乾物収量は、「SSR4」を含む市販の高消化性品種より高い(表23)。
  • 高消化性遺伝子bmr-18を有している(表3)。リグニン含量は、いずれの播種期においても「SSR4」よりやや低い(表2)。1番草の推定TDN含量は、市販の高消化性品種と同程度である(表3)。
  • 草丈は「SSR4」よりやや高く、稈径「SSR4」はやや太く、茎数は「SSR4」並である(表2)。
  • 紫斑点病抵抗性は「SSR4」より劣る「弱」である。すす紋病抵抗性は「SSR4」と同じ「やや強」である(表1)。
  • 耐倒伏性は、「SSR4」並かやや劣る(表2)。
  • 無加温ビニールハウスに2月下旬播種で栽培した場合、種子親は花粉親より2週間程度早く出穂する。雌雄畦比4:1での採種量は15.5kg/a程度である。(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本系統は糸黒穂病の回避と同様に、ソルガム出穂に伴う蔓延の可能性のある麦角病などについても有効である。
  • 耐倒伏性にやや劣るので、密植は避ける。
  • 紫斑点病抵抗性を有しないので、発生地帯での栽培は避ける。
  • 晩播で出穂が遅延するが、晩播による乾物収量の低下が小さい。

具体的データ

写真1 「九州交3号」の出穂始の草姿

表1 「九州交3号」の主要特性

表2 「九州交3号」の生産力試験成績

表3 市販の高消化性品種との比較試験成績

その他

  • 研究課題名:暖地・南西諸島の農業を支えるさとうきび等資源作物の低コスト安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:211g
  • 予算区分:基盤、委託プロ(エサプロ)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:高井智之、我有満、山下浩、桂真昭、松岡秀道、後藤和美