飼料イネの2回刈り栽培における1回目収穫時の刈り取り高さがTDNに及ぼす影響

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要約

1回目収穫時の刈り取り高さを低くすると、2回目イネの葉鞘+茎の推定TDN含有率および2回刈り合計の葉鞘+茎の推定TDN収量は増加する。

  • キーワード:飼料イネ、2回刈り栽培、刈り取り高さ、可消化養分総量
  • 担当:九州沖縄農研・イネ発酵TMR研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-0670
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、作物、共通基盤・総合研究(飼料イネ)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

これまでに、飼料イネの2回刈り乾物多収栽培法を開発する(平成19年度研究成果情報)と共に、この栽培法の普及拡大に向け、機械化体系において1回目収穫時に懸念される刈り取り高さおよび収穫機による切株への踏圧が乾物収量に及ぼす影響を明らかにした(平成20年度研究成果情報)。飼料イネの生産では、給与時の不消化籾による栄養分のロスを少なくするためには、穂よりも茎葉、特に植物全体に対する乾物比率の高い葉鞘+茎に栄養分を蓄積させることが有効であると考えられている。そこで本研究では、飼料イネの2回刈り栽培における1回目収穫時の刈り取り高さが葉鞘+茎の推定可消化養分総量(TDN)含有率および収量に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 1回目収穫時の刈り取り高さを低くすると、1回目イネの葉鞘+茎の乾物収量は、「Taporuri」および「タチアオバ」とも大きく増加する(図1)。また、2回目イネの葉鞘+茎の乾物収量は、「Taporuri」では変わらず、「タチアオバ」では減少する。このため、2回刈り合計の葉鞘+茎の乾物収量は、両品種とも増加する傾向がある。
  • 1回目収穫時の刈り取り高さを低くしても、1回目イネの葉鞘+茎の推定TDN含有率は、両品種とも増減しない(データ略)。
  • 1回目収穫時の刈り取り高さを下げると、両品種とも、2回目イネの出穂期は遅れ(表1)、出穂期および登熟期が低温のため茎から穂への糖の転流が抑制され、穂の細胞内容物(OCC)含有率は減少する(データ略)。この結果、2回目イネの葉鞘+茎のOCC含有率が増加し、その推定TDN含有率は増加する(図2)。
  • 以上のことから、1回目収穫時の刈り取り高さを低くすると、1回目イネの葉鞘+茎の推定TDN収量は、両品種とも大きく増加する(図3)。また、2回目イネの葉鞘+茎の推定TDN収量は、「Taporuri」では増減せず、「タチアオバ」では減少する。このため、2回刈り合計の葉鞘+茎の推定TDN収量は、両品種とも増加する傾向がある。

成果の活用面・留意点

  • 普及現場における基礎的な知見として利用できる。
  • 1回目収穫時の刈り取り高さは、地際から5 cm程度が望ましいが、圃場の状態に応じて決定する。
  • 1回目収穫時の刈り取り高さを低くすると、1回目イネの稲体全体の推定TDN含有率は両品種とも変わらない。また、2回目イネの稲体全体の推定TDN含有率は、「Taporuri」では変わらず、「タチアオバ」では増加する。
  • 1回目収穫時の刈り取り高さを低くすると、1回目イネの稲体全体の推定TDN収量は両品種とも増加する。また、2回目イネの稲体全体の推定TDN収量は両品種とも減少する傾向がある。このため、2回刈り合計の稲体全体の推定TDN収量は、両品種とも大きく増減しない。

具体的データ

表1 刈り取り高さが2回目イネの出穂期に及ぼす影響

図1 刈り取り高さが飼料イネの葉鞘+茎の乾物収量に及ぼす影響

図2 刈り取り高さが2回目イネの葉鞘+茎の推定TDNおよびOCC含有率に及ぼす影響

図3 刈り取り高さが飼料イネの葉鞘+茎の推定TDN収量に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
  • 中課題整理番号:212b.5
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:中野洋、服部育男、佐藤健次、森田敏、北川壽、高橋幹