カンショ焼酎粕濃縮液を含む発酵TMRは泌乳牛の飼料として利用できる
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要約
カンショ焼酎粕濃縮液を添加して調製した発酵TMRは発酵品質に問題はなく、乳量および牛乳の風味に影響を及ぼさず、泌乳牛用飼料として利用可能である。
- キーワード:カンショ焼酎粕濃縮液、発酵TMR、泌乳牛、乳生産
- 担当:九州沖縄農研・イネ発酵TMR研究チーム
- 代表連絡先:電話096-242-1150
- 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)、畜産草地、共通基盤・総合研究(飼料イネ)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
濃縮と乾燥からなる焼酎粕処理施設の設置が近年急速に進んでおり、乾燥焼酎粕はすでに飼料として利用されている。乾燥調製には多くのエネルギー投入が必要であり、二酸化炭素排出やコスト等に課題があった。一方、濃縮液として飼料利用が可能となれば、飼料価格の低減にもつながり、排出者および利用者ともにメリットが高まり、焼酎粕の利用がいっそう促進されるものと考えられる。そこで、本格焼酎のうち最も生産量の多いカンショ焼酎に着目し、カンショ焼酎粕濃縮液を乳牛用発酵TMR(完全混合飼料)原料として用いた場合の発酵品質、栄養価、乳生産成績および乳の風味に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- カンショ焼酎粕濃縮液の化学組成および栄養価は表1に示すとおりであり、トウモロコシや大豆粕に比べ、繊維含量が低く、粗灰分含量が高く、特にカリウム含量が高いという特徴を持つ。
- カンショ焼酎粕濃縮液のTMRへの添加割合を0%、10%および20%とした場合、添加割合に関わらず、調製から約3ヵ月後の発酵品質に問題は認められない(表2)。
- ホルスタイン種泌乳牛(泌乳後期)4頭に1期2週間として濃縮液添加割合0%、10%および20%(それぞれ、0%区、10%区および20%区)の順で発酵TMRを給与した場合、乾物摂取量は濃縮液20%区で最も高くなるが、乳生産量は試験区に影響されない。また、乳脂肪率および血液中尿素体窒素濃度に処理間差が見られるが、乳期および尿素添加の影響と考えられる(表3)。
- 生産された乳の風味は、0%区と10%区間、および0%区と20%区間に有意差は認められない(表4)。
成果の活用面・留意点
- カンショ焼酎粕濃縮液は濃厚飼料の代替として牛用飼料に用いる場合の飼料設計の参考になる。
- カンショ焼酎粕濃縮液は一般的にカリウム含量が高いため、飼料設計においては飼料中のカリウム含量が3%を超えないよう(日本飼養標準乳牛2006年版)特に注意する。
- カンショ焼酎粕濃縮液の水分および飼料成分は原材料や処理方法によって異なるため、飼料設計時には確認する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
- 中課題整理番号:212b.5
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:鈴木知之、神谷裕子、田中正仁、服部育男、佐藤健次