暖地高標高地の耕作放棄地における飼料用トウモロコシの不耕起栽培技術

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要約

暖地の標高800m程度の雑木等のない傾斜のある耕作放棄地において、前植生を刈払った後にトウモロコシの出芽前および生育初期に除草剤処理することで、平地の飼料畑と同様に飼料用トウモロコシを不耕起栽培できる。

  • キーワード:耕作放棄地、不耕起栽培、飼料用トウモロコシ、雑草、中山間地
  • 担当:九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

耕作放棄地で耕作を再開する際には前植生を刈払い、圃場を耕起・整地して栽培を行うが、高標高地では傾斜のある圃場も多く、耕起を中心とした圃場整備は土壌保全の面から適応できない例が見られる。特に高標高地は気温が低く、平地と比較して雑草の侵入が遅いため、播種機や収穫機等が進入できれば、前植生の刈払いと除草剤処理で不耕起栽培が可能な場合も多いと考えられる。そのため耕作放棄地で利用できる不耕起栽培技術の開発が必要である。そこで高標高地の傾斜のある耕作放棄地で利用可能な飼料用トウモロコシの不耕起栽培技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 平地の飼料畑での飼料用トウモロコシ不耕起栽培は、播種時に非選択性の茎葉処理除草剤を処理して播種前の雑草を防除し、さらに生育初期に選択性の茎葉処理除草剤を利用すると雑草を防除でき、高収量になる(表1)。
  • 放棄後2年程度経過した放棄地Aでは前植生を刈払い、雑草の再生草に非選択性除草剤を処理し、生育初期に選択性除草剤を処理すると、耕起栽培では約1.2t/10a、不耕起栽培で約1t/10aの乾物収量が得られ、雑草量は耕起栽培の約39kg/10aに対し、不耕起栽培で約63kg/10aと同程度に抑制でき、平地の飼料畑と同様の除草剤処理体系が有効である(表2)。
  • 放棄後10年以上経過し、雑草量の多い放棄地Bでは、刈払いと再生草への非選択性除草剤処理を2回繰り返し、生育初期に選択性除草剤処理を行う事で、飼料畑と同程度に雑草を抑制でき、1.2~1.6t/10aの収量が得られる(表2写真1)。

成果の活用面・留意点

  • 小規模圃場でも対応可能な不耕起播種機や、ロータリードラム式の収穫機等の作業機械が利用可能な緩傾斜地での飼料用トウモロコシ栽培に活用できる。
  • 現地の雑草種や繁茂状況により除草の程度を決定する。
  • 雑草が多い場合やつる性の雑草がある場合には刈払い後に除去する。また、雑木等が侵入している放棄地や株化した雑草が多い場合には本技術は適さない。
  • 台風による倒伏被害を軽減するため、耐倒伏性の高い品種を利用する。また獣害が予想される地域では獣害対策を行う。

具体的データ

表1 飼料畑でのトウモロコシ不耕起栽培時の除草剤処理別の収量および収穫時雑草量

表2 熊本県産山村の耕作放棄地で実施した現地試験結果

写真1 試験地Bの状況

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 中課題整理番号:212d.4
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2008年度
  • 研究担当者:加藤直樹、山田明央、吉川好文、村木正則、佐藤健次、服部育男、中村好徳、常石英作
  • 発表論文等:1)加藤ら(2007)日草九支報、37(2):1-4