だいず「フクユタカ」よりハスモンヨトウ抵抗性が強い新品種「フクミノリ」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

だいず「フクミノリ」は、ハスモンヨトウ抵抗性遺伝子をDNAマーカーを利用して「フクユタカ」に導入した系統である。成熟期、収量、子実の外観、成分は「フクユタカ」と同等であり、豆腐に適する。

  • キーワード:ダイズ、ハスモンヨトウ抵抗性、DNAマーカー、豆腐加工適性
  • 担当:九州沖縄農研・大豆育種研究九州サブチーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、作物・畑作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

大豆の国際市場価格は上昇傾向にあり、実需者から国産大豆の安定供給が強く求められている。国産大豆の用途の約半分が豆腐であり、西日本で栽培されている「フクユタカ」は豆腐加工適性に優れ、作付面積日本一を誇る品種である。「フクユタカ」は暖地での栽培に向いているが、例年多く発生する害虫であるハスモンヨトウに対する抵抗性がなく、減収の要因となっている。そこで、ハスモンヨトウ抵抗性品種「ヒメシラズ」由来の抵抗性遺伝子CCW-1CCW-2を、DNAマーカー選抜を用いた連続戻し交配により「フクユタカ」に導入し、「フクユタカ」の優良な農業形質と、ハスモンヨトウ抵抗性を併せ持った品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「フクミノリ」は、2000年から九州農業試験場(現、九州沖縄農業研究センター)において、ハスモンヨトウ抵抗性の青刈大豆品種「ヒメシラズ」に西日本の主力品種「フクユタカ」を5回連続戻し交配した系統であり、わが国ではDNAマーカー選抜を利用して育成した初めての大豆品種である。
  • 開花期、成熟期、主茎長、主茎節数、分枝数、収量は「フクユタカ」と同等であり、百粒重はやや小さい(表1)。
  • 奨励品種決定調査においても、「フクユタカ」並みの収量である(図1)。
  • 子実中の粗蛋白質含有率は42%前後で「フクユタカ」並みに高く、豆腐に適する(表1)。
  • 室内で行ったハスモンヨトウの幼虫飼育試験、選好性試験では、「フクユタカ」よりも抵抗性が強い(表2図2)。
  • 圃場におけるハスモンヨトウ幼虫個体群密度調査では、「フクユタカ」より個体群密度が低い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地はフクユタカと同じ地域。
  • ハスモンヨトウが全く発生しないわけではないため、発生状況に応じて防除が必要である。
  • ハスモンヨトウ以外の害虫に対する抵抗性については調査していないため、発生状況に応じて防除が必要である。
  • 普及に向けて、今後さらに大規模な試作栽培でハスモンヨトウ抵抗性の効果を確認し、実規模での加工適性試験を行うことが望まれるため、こうした試作等に広く対応できるよう、品種登録申請を行う。

具体的データ

図1 奨励品種決定調査における子実重。

図2 フクミノリとフクユタカのハスモンヨトウ幼虫 (6齢、脱皮後3日目)による被食度の差。

表1 「フクミノリ」の特性一覧表

表2 ハスモンヨトウ抵抗性

 

その他

  • 研究課題名:省力・機械化適性、加工適性、病害虫抵抗性を有する食品用大豆品種の育成と品質安定化技術の開発
  • 中課題整理番号:211b
  • 予算区分:基盤、委託プロ(新農業展開)
  • 研究期間:2000~2009年度
  • 研究担当者:大木信彦、小松邦彦、高橋幹、高橋将一、中澤芳則、松永亮一
  • 発表論文等:Komatsu K. et al. (2004)Breed. Sci. 54(1):27-32, Komatsu K. et al. (2005)Crop Sci. 45: 2044-2048, Komatsu K. et al. (2007)Genet. Mol. Biol. 30(3):635-639, Komatsu K. et al. (2008)Crop Sci. 48:527-532