乳牛ロース芯カルニチン含量は泌乳量と負の相関がある

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

乳牛のロース芯カルニチン含量は、泌乳量との間に顕著な負の相関が認められ、泌乳量が多かった乳牛では筋肉中カルニチン含量が低下している。

  • キーワード:乳牛、搾乳、泌乳量、牛肉、カルニチン
  • 担当:九州沖縄農研・周年放牧研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)、畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

草食動物の筋肉中に多く含まれるカルニチンは、脂肪酸の体内燃焼に関わる成分として知られている。そして、肉用牛(肉用種と乳用種の(若齢)肥育牛、肉専用種の経産牛)のロース芯における総カルニチン(遊離型+結合型)含量は、幼牛よりも成牛で多く含まれることが明らかになっている。このため、搾乳終了後の乳牛(いわゆる乳廃牛)の肉もカルニチン含量が多いのではないかという期待感が、酪農関係者から寄せられていた。そこで乳牛ロース芯のカルニチン含量を調査するとともに、その影響要因を検討する。

成果の内容・特徴

  • 肉用牛では加齢に伴うロース芯カルニチン含量(mg/100g)の増加が認められるが、乳牛では、産歴0の牛で最大値162.3を示し同一月齢の肉用牛とほぼ同じ値を示すものの、他の産歴のある乳牛では34.2~122.6となり、肉用牛と比較して極めて低い値となる(図1)。
  • ロース芯カルニチン含量に対する泌乳量の影響は顕著であり、最終乳期における泌乳量との間にr=~0.685(n=15)、産歴のない1頭を加えるとr=~0.771(n=16)と、いずれも1%水準で有意な負の相関が認められる(表1)。
  • 乳牛のロース芯カルニチン含量に対する泌乳量と産次の重回帰において、説明変数への産次の追加はP=0.09と有意とはならないものの、重相関係数R=0.766となり、回帰式《~0.0062[泌乳量]~10.96[産次数]+151.6(n=15)》が得られ、産次の影響もある程度認められる(図2)。
  • 4産の乳牛におけるロース芯カルニチン含量と泌乳量との間でr=~0.841(n=6)と5%水準で有意な負の相関が認められ、回帰係数も2産や3産の乳牛と比較して大きくなる。すなわち、産次が進んだ乳牛では、泌乳量の増加に伴うロース芯カルニチン含量の低下が顕著となる。

成果の活用面・留意点

  • 乳廃牛肥育において、肉用牛の経産牛で認められたような豊富なカルニチン含量は期待できない。

具体的データ

図1 牛の月齢とロース芯カルニチン含量の関係

表1 ロース芯カルニチン含量との相関係数

図2 泌乳量とロース芯カルニチン含量との関係

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 中課題整理番号:212d.4
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:常石英作、田中正仁、鈴木知之、神谷裕子、中村好徳、神谷充、柴伸弥