日本のタバココナジラミ集団の分布域と主要在来集団の簡易識別法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

従来法とバイオタイプJpLとNauruの簡易識別法を併用することで、日本に分布するタバココナジラミは、2侵入集団(バイオタイプB、バイオタイプQ)と2在来集団(バイオタイプJpL、バイオタイプNauru)の4集団が識別できる。

  • キーワード:タバココナジラミ、バイオタイプ、在来集団、COI、国内分布
  • 担当:九州研・暖地施設野菜花き研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-43-8430
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

タバココナジラミ(Bemisia tabaci)は世界中に広く分布する害虫である。本種は寄主特異性、エステラーゼプロファイル、分子マーカーを利用する解析法等に基づいて、少なくとも20以上のバイオタイプに区分される(Perring 2001)。複数のバイオタイプは、ベイズ法を用いた系統解析により12の遺伝集団(集団)に整理される(Boykin et al. 2007)。しかし、本種の国内での生息分布等に関する知見は極めて乏しく、適切な防除を行うにはこうした知見を蓄積することが重要である。そこで、国内各地で採集したタバココナジラミ個体群の遺伝子を利用した系統解析を行い、集団の分布を把握する。また、新たに同定した主要な2つの在来集団に対してPCR法を用いた簡便な識別法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 2004年から2008年に採集したタバココナジラミ個体群を対象にして、ミトコンドリアチトクロームオキシダーゼI (mtCOI)遺伝子配列を用いてベイズ法により系統解析を行う。その結果、日本には2つの侵入集団(バイオタイプB、バイオタイプQ)が広く分布するだけでなく、4つの在来集団(バイオタイプJpL、バイオタイプNauru、中国型、アジアI型)の計6集団が確認される。
  • 主要な在来集団として九州以北ではJpL、南西諸島以南ではNauruが広範囲に分布する。JpLはスイカズラ、トマト、ナス、シソ、Nauruは主にサツマイモ、他にインゲン、ナス、ピーマン等から採集される。
  • 主要な在来2集団(JpL、Nauru)は、mtCOI遺伝子内のグループ特異的配列を利用したPCR法により増幅する約640bp(JpL)、約500bp(Nauru)の特異的な各DNA産物をアガロースゲル電気泳動法で確認することにより簡便に識別できる。

成果の活用面・留意点

  • タバココナジラミからの核酸抽出及びPCR法は、Frohlich et al.(1999)、上田(2006)等の方法に準じて行う。
  • 本識別法とバイオタイプQに対する識別法(上田, 2006)を併用することにより国内で確認される主要な4集団(バイオタイプQ、B、JpL、Nauru)の簡易識別は可能である。中国型、アジアI型(該当するバイオタイプ名不明)の識別が必要な場合には、mtCOI配列を解析する。
  • mtCOI塩基配列データは、DDBJ/EMBL/GenBankデータベースから取得できる(アクセッション番号AB308110-AB308129、AB440783-AB440792)。

具体的データ

図1 タバココナジラミ集団の国内分布の概略

図2 PCR 法による主要な日本在来タバココナジラミ(バイオタイプ JpL 、 Nauru )の簡易識別

その他

  • 研究課題名:暖地における簡易施設等を活用した野菜花きの高収益安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:213d
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:上田重文、貴島圭介(沖縄農研セ)、北村登史雄、本多健一郎、上宮健吉(久留米大)、岡崎真一郎(大分農林水産研)、大貫正俊
  • 発表論文等:Ueda et al. (2009) Journal of Applied Entomology. 133:355-366.