エンバクではフタテンチビヨコバイの加害によってワラビー萎縮症が発症する
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要約
フタテンチビヨコバイに加害されたエンバクはワラビー萎縮症を発症し、草丈の伸長が著しく抑制される。オーチャドグラス、ソルガム、ローズグラス、ギニアグラス、スーダングラスではワラビー萎縮症は発症しない。
- キーワード:フタテンチビヨコバイ、ワラビー萎縮症、エンバク、飼料作物、生育障害
- 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
- 代表連絡先:電話096-242-7732
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
ワラビー萎縮症は、フタテンチビヨコバイの加害によって葉脈がコブ状に隆起し草丈の伸長が著しく抑制される生育障害で、近年は九州中部の飼料用夏播きトウモロコシにおける減収要因の一つとなっている。フタテンチビヨコバイはイネやコムギにもワラビー萎縮症を引き起こすことが知られており、地球温暖化の進行による虫の分布地域の拡大や飼料作物栽培体系の変化等に伴って、トウモロコシ以外の夏播き飼料用作物でも新たにワラビー萎縮症の被害が発生する可能性がある。そこで、夏播き飼料用作物6種にフタテンチビヨコバイを加害させる試験を行い、トウモロコシ以外の飼料用作物についてもワラビー萎縮症の発症リスクを明らかにする。
成果の内容・特徴
- フタテンチビヨコバイに加害されたエンバクは、ワラビー萎縮症(葉脈が隆起し草丈伸長が著しく抑制される症状)を発症する(図1、図2)。
- オーチャドグラスとローズグラスでは、草丈の伸長は抑制されるが(図1)、葉脈隆起は生じない。
- ギニアグラス、スーダングラス、ソルガムでは草丈の伸長抑制(図1)も葉脈隆起も認められない。
- エンバクの主要品種には、ワラビー萎縮症の発症程度に品種間差は認められない(図3)。
- フタテンチビヨコバイはオーチャドグラス、エンバク、スーダングラス、ソルガム上では成虫(データ略)・幼虫(図4)とも高い生存率を示すが、ギニアグラスとローズグラス上での生存率は低い。
成果の活用面・留意点
- フタテンチビヨコバイ分布地域での飼料用夏播き作物選定の際の基礎資料となる。
- 本成果は全て室内実験の結果に基づくものであり、圃場レベルでの被害発生の有無は別途検証する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
- 中課題整理番号:214h
- 予算区分:委託プロ(えさプロ)
- 研究期間:2008~2009年度
- 研究担当者:松倉啓一郎、松村正哉
- 発表論文等:松倉、松村(2009)九州病害虫研究会報、55: 105-110