黒毛和種繁殖雌牛は暑熱環境下で発情周期が延長する
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要約
黒毛和種繁殖雌牛では体温の上昇が認められる夏季に発情周期が延長し、発情中の運動量が減少する。また、血中抗酸化酵素の活性が有意に低くなる。
- キーワード:牛、黒毛和種、発情周期、季節変化
- 担当:九州沖縄農研・暖地温暖化研究チーム
- 代表連絡先:電話096-242-7746
- 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)、畜産草地
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
九州内では近年肉用牛での夏季の受精頭数の減少、受胎率の低下などが報告されており、肉用牛においても夏季の高温環境は繁殖性に悪影響を及ぼしている可能性が示唆される。夏季高温下における繁殖性の低下は乳牛で顕著あるが、肉用牛では不明な点が多い。そこで、黒毛和種繁殖雌牛における体温、発情周期、発情中の運動量、血中抗酸化酵素活性に及ぼす夏季の影響について検討を行いその影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 黒毛和種繁殖雌牛の腟の日最高温度は、冬季(1-3月)と比較し気温が上昇する夏季(7-9月)に有意に上昇する(表1)。
- 冬季の発情周期は通常の周期(21日)であるが、夏季にはその周期は有意に延長する(図1)。発情持続時間および発情周期中の血中プロジェステロン濃度の推移に冬季、夏季の差は認められない。
- 前肢に装着した万歩計で計測した歩数より非発情期の運動量に対する発情中の運動量の割合を算出したところ、冬季と比べて夏季は運動量が1/3程度に低下する(図2)。
- 月一回の採血により、得られた血漿中脂質過酸化指標(TBARS)は夏季に有意に高い値を示し、抗酸化酵素である血球中スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD), 全血中グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は夏季に有意に低くなり、血球中還元物質である総グルタチオン濃度も有意に低い値を示す(表2)。
成果の活用面・留意点
- 屋根のないコンクリート敷き屋外パドックにて冬季4頭、夏季9頭の黒毛和種経産雌牛から得られたデータである。
- 黒毛和種繁殖雌牛における高温ストレスの影響評価に活用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
- 課題ID:215a.3
- 予算区分:基盤「気候温暖化」、交付金プロ(温暖化畜産)
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:阪谷美樹、高橋昌志