サツマイモ塊根の糖質含量の制御に関与する転写因子SRF1

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要約

サツマイモの遺伝子SRF1 はDof 型の転写因子をコードする。SRF1 を過剰発現するサツマイモ形質転換体(品種「高系14号」)の塊根では、遊離のグルコースおよびフラクトースの含量が低下するとともに、デンプン含量が増加する。

  • キーワード:サツマイモ、塊根、糖代謝、デンプン、分子育種
  • 担当:九州沖縄農研・機能性利用研究チーム
  • 代表連絡先:電話0986-24-4273
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

サツマイモの塊根には、デンプンや遊離糖類などの糖質が蓄積されている。しかし、これまでのところ、糖質の含量の制御に関する分子レベルでの知見は限られている。一方、他の植物における研究から、細胞内におけるショ糖の利用に関与する2つの酵素であるインベルターゼとショ糖合成酵素の活性のバランスが貯蔵器官における糖質含量の制御に重要な役割を果たすことが知られている。ここでは、Dof 型の転写因子SRF1 を過剰発現するサツマイモの形質転換体について遺伝子発現や糖質含量を調査し、塊根の糖質含量の制御へのSRF1 の関与を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • サツマイモの遺伝子SRF1 はDof 型のジンクフィンガードメインを持ち、497アミノ酸からなる転写因子をコードする(図1)。
  • SRF1 を過剰発現するサツマイモ形質転換体(品種「高系14号」)では、3個ある液胞型インベルターゼ遺伝子の1つであるIbβfruct2 の塊根での発現が非形質転換体の15~25%程度に減少し、液胞型インベルターゼの活性も35%程度に減少する(図2)。
  • SRF1 を過剰発現する形質転換体では、塊根のデンプン含量が非形質転換体の1.2倍程度に増加する。一方、遊離のグルコースおよびフラクトースの含量は非形質転換体に比べて30%以下に低下する(表1)。
  • 以上の結果は、SRF1 が液胞型インベルターゼの活性の転写レベルでの調節を介して、塊根の糖質含量の制御に関与することを示唆している(図3)。

成果の活用面・留意点

  • サツマイモの糖代謝の分子育種のための基礎的資料となる。
  • 転写因子は、遺伝子の転写調節領域に結合し、遺伝情報のRNAへの転写を促進または抑制するタンパク質因子のことである。
  • SRF1 遺伝子の塩基配列はDDBJ/GenBank/EMBLデータベースに登録済みである(アクセション番号はAB469355)。

具体的データ

表1 SRF1過剰発現植物体の塊根の糖質含量

図1 SRF1タンパク質の構造(a)とグループII Dof型転写因子の分子系統解析(b)

図2 SRF1過剰発現植物体の塊根における液胞型インベルターゼの遺伝子発現(a)と酵素活性(b)

図3</a> 塊根細胞内の糖代謝におけるSRF1の機能のモデル

その他

  • 研究課題名:いも類・雑穀等の機能性の解明と利用技術の開発
  • 中課題整理番号:312a
  • 予算区分:交付金プロ(形態・生理)、重点強化費(バイオマス)
  • 研究期間:2004~2009年度
  • 研究担当者:田中勝、中山博貴、高畑康浩
  • 発表論文等:Tanaka et al. (2009) Planta 230:737-746