澱粉合成酵素の発現抑制によるカンショへの低温糊化澱粉特性の付与

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要約

II型澱粉合成酵素の発現をRNA干渉法により抑制した形質転換カンショを作成することにより塊根の澱粉に低温糊化澱粉特性を付与できる。澱粉の糊化開始温度は原品種より10°C以上低下し、多くの形質転換体の塊根の澱粉歩留は原品種とほぼ同等である。

  • キーワード:サツマイモ、澱粉合成酵素、低温糊化、組換え、カンショ
  • 担当:九州沖縄農研・機能性利用研究チーム
  • 代表連絡先:電話0986-24-4270
  • 区分:バイオマス、九州沖縄農業・畑作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

南九州畑作地帯の基幹作物であるカンショは、単位面積当たりのエネルギー生産量が多く、不良環境においても比較的高い澱粉生産能力を示すバイオマス資源作物であるが、バイオ燃料として利用するためには、生産コスト低減や多収系統の作出に加えて澱粉の糖化効率向上を目指した質的な改良も重要である。そこで、低温糊化澱粉特性をカンショ既存品種へ付与するための遺伝子組換え技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 低温糊化澱粉特性を付与するため、II型澱粉合成酵素をRNA干渉法により発現抑制するためのベクターpBI-35S-SSiを構築(図1)し、品種「White Star」(WS)のエンブリオジェニックカルスにアグロバクテリウム感染法を用いてベクターを導入して再分化させることにより形質転換カンショ植物体を得ることができる。
  • 閉鎖系温室でポット栽培して得た塊根の澱粉歩留はWSとほぼ同等であるが、糊化開始温度はいずれの系統でもWSに比べて10°C以上低下する。また、最高粘度およびブレークダウンも低下し、カンショの低温糊化澱粉の特徴を示す(表1)。
  • 各形質転換カンショ植物体の地上部重、塊根重、乾物率(凍結乾燥による)ともWSと比べて著しく劣るものはない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • カンショに低温糊化澱粉特性を付与する遺伝子組換え技術として活用できる。
  • 本技術で対象とした澱粉合成酵素は、他の作物において低温糊化澱粉特性に関与することが明らかとなっているII型澱粉合成酵素である。ベクターの詳細については、要望に応じて情報提供可能である。
  • 本ベクターの導入により高澱粉品種「コナホマレ」においても低温糊化澱粉特性を付与できる。このことは、他の優良品種への適用に対する本技術の高い可能性を示している。

具体的データ

図1 低温糊化澱粉特性付与のために構築された導入用ベクターpBI-35S-SSi

表1 各系統のラピッドビスコアナライザーによる澱粉の粘度特性

表2 各系統の地上部重、塊根重・数および塊根乾物率

その他

  • 研究課題名:バイオエタノール原料としての資源作物の多収品種の育成と低コスト・多収栽培技術等の開発
  • 中課題整理番号:224a.3
  • 予算区分:委託プロ(地域バイオマス1系)、重点強化費
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:高畑康浩、田中勝、大谷基泰(石川県立大)、片山健二、北原兼文(鹿児島大)、中谷内修(石川県立大)、中山博貴、吉永優
  • 発表論文等:Takahata et al. (2010) Plant Cell Rep 29:535-543