チューブキャプチャーLAMP法によるウリ類退緑黄化ウイルスの簡易迅速な感染診断

要約

改変したチューブキャプチャー法によるRNA抽出とCCYVの70kDa熱ショックタンパク質遺伝子領域を特異的に増幅するプライマーを用いたLAMP法を組み合わせることで、ウリ類退緑黄化ウイルスの感染診断を迅速に行える。

  • キーワード:ウリ類退緑黄化ウイルス、LAMP法、感染診断
  • 担当:九州沖縄農研・暖地施設野菜花き研究チーム、中央農研・昆虫等媒介病害研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7730
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫(病害)、共通基盤・病害虫(病害)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV)は、タバココナジラミにより媒介される新種のウイルスである。CCYVが感染したメロン、キュウリおよびスイカは、葉が激しく黄化し、果実品質や収量が低下する。本病は現在、九州全県、四国および関東の一部の県などで発生が確認されているが、発生地域は拡大しており、被害軽減のために迅速かつ正確な診断法が必要である。そこで、Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法を用いたDNA増幅によりCCYVを検出する手法を開発し、感染診断に利用する。また、診断のさらなる簡易化と迅速化のために、フェノール等の劇物を利用することなくウイルス粒子をマイクロチューブに物理的に吸着させるチューブキャプチャー法(James, 1999)を改変し、LAMP法と組み合わせたチューブキャプチャーLAMP法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 感染が疑われる葉から、改変したチューブキャプチャー法(図1、図2)により、ウイルスRNAを短時間に抽出できる。
  • CCYVの熱ショックタンパク質(HSP70h)遺伝子の塩基配列を増幅標的として設計したLAMPプライマー(図2)とRNA増幅試薬キット(栄研化学株式会社)を用いて反応を行うと、CCYV感染植物から抽出したRNAを鋳型とした場合にのみDNA増幅が認められる(図3)。さらに標的領域に適したLoopプライマー(図2)を追加することで、反応速度が向上する(図3)
  • 反応液に蛍光・目視検出試薬(栄研化学株式会社)を混合して63°Cで60分間反応させた後、反応液に黄緑蛍光が認められた場合、ウリ類退緑黄化ウイルスに感染している(陽性)と判断する(図4)。チューブに波長370mm程度の紫外線を照射することで、より明確に判定できる。
  • チューブキャプチャーLAMP法により2時間以内に診断が可能となり、検出感度は従来法であるPCR法と比較して同等以上であり、無病徴感染植物からも検出可能である。

成果の活用面・留意点

  • LAMP反応に用いる恒温槽(インキュベーター)は、市販のサーマルサイクラー、水相または気相のインキュベーター等が利用可能である。また、市販の保温容器も利用可能であるため、診断に要する設備費用を抑えることが出来る。
  • 反応後の産物が混入することに起因する偽陽性を避けるため、診断後のチューブは開封せず、そのまま破棄すること。
  • RNA増幅試薬および蛍光・目視検出試薬は、栄研化学株式会社より入手可能である。また、チューブキャプチャー法とLAMP法を組み合わせたウリ類退緑黄化ウイルス検出キット(製品情報記載ホームページhttp://genome.e-mp.jp/products/uri.html)は、株式会社ニッポンジーンより入手可能である。

 具体的データ

図1 チューブキャプチャーLAMP 法の手順の概略

図2 チューブキャプチャー法に使用する試薬の組成(左)およびCCYV のHSP70h 遺伝子領 域を特異的に増幅するLAMP プライマーの塩基配列(右)

図3 CCYV のHSP70h 遺伝子領域を特異的に増幅 するプライマーを用いたLAMP 法によるDNA の増幅 DNA 増幅量は濁度計LA-200 により推定したため、反 応後期は沈殿により値が減少している。

図4 蛍光・目視検出試薬を加えた反応 液の反応後の様子

(奥田充)

その他

  • 研究課題名:暖地における簡易施設等を活用した野菜花きの高収益安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号: 213d
  • 予算区分: 基盤、実用技術
  • 研究期間:2006?2010 年度
  • 研究担当者:奥田充、久保田健嗣 、酒井淳一、大貫正俊