施肥の深さや分布の調節が容易な耕うん同時施肥播種機

要約

リヤカバーのないアップカットロータリを用い、耕起時に飛散する土壌中に肥料や種子を帯状に施用・播種することにより、肥料の施肥位置を深層や表層などへ容易に調節できる耕うん同時施肥播種機である。

  • キーワード:アップカットロータリ、深層施肥、表層散播播種、肥効
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-3101
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

  土地利用型作物の施肥位置としては条施用や全面全層施用が一般的であるが、近年生産コストの削減や環境負荷低減を図るため、より効率的な施肥技術の開発が望まれている。また、福岡県糸島半島で普及しているアップカットロータリを活用したムギの表層散播播種(表層1cm程度の深さに散播する畦立て同時播種技術)では施肥は全面全層となっているが、肥効の面からは全面での深層施肥(肥料を作土深部に施用)が望まれている。
  そこで、  アップカットロータリを活用した表層散播播種技術を用い、深層施肥が可能で、かつ土壌中の肥料の施用位置や分布状態を容易に調節できる、耕うん同時施肥播種機を開発する。
 

成果の内容・特徴

  • 本開発機は、リヤカバーを外したアップカットロータリと、散粒器を装備した施肥播種機から構成され、ロータリ後方に飛散する土壌中に肥料等を帯状に施用できる(図1)。
  • 散粒器の位置を前方にすると施用深さが深くなり、後方にすると施用深さが浅くなることから、前方に施肥機を装着することにより深層施肥が行え、後方に播種機を装着することにより表層散播播種が可能となる(図2)。
  • 散粒器の進行方向に対する角度を変更することにより施肥位置を調節でき、散粒器の代わりに漏斗を装着すれば条播も可能である。また、施肥播種機の配置を変更することで条数や畦内の横方向の施用位置も容易に調節できる(図3・4)。

成果の活用面・留意点

  • 深層施肥・表層散播播種はムギ・ソバ等での利用が期待できる。
  • 深さ方向に分布させる施肥は、条播やセル成形苗を移植する野菜・花での利用が期 待できる。
  • 肥料は、耕うん深20cmの場合深さ15cm程度まで施用できるが、肥料・種子の一部は耕うん時に飛散してくる土壌に弾かれるため、施用深さはある程度の幅を持った分布となる。
  • 土壌状態や肥料形状それに作業速度等によって施用位置が変化するので、作業条件毎に散粒器の前後位置・角度そして作業速度等には留意する必要がある。
  • ダウンカットロータリではリヤカバーを外すと土壌が後方に飛散しすぎるので、本技術の適用は困難である。

具体的データ

図1 開発機の作業状況

図2 深層施肥・表層散播播種模式図

図3 散粒器

図4 施肥分布調節模式図

(土屋史紀)

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 中課題整理番号:211k.8
  • 予算区分:基盤、委託プロ(担い手、底力)
  • 研究期間:2008 ~ 2010 年度
  • 研究担当者:土屋史紀、田坂幸平、増田欣也、深見公一郎