秋収穫が可能で黒糖品質の良いサトウキビ新品種候補「KY96T-547」
要約
「KY96T-547」は、糖度の上昇が早く高い甘蔗糖度に達する極早期高糖性のサトウキビ新品種候補で、地域によって10月収穫が可能である。黒糖への加工適性が高く、低品質原料が問題となる本土西南暖地等での高品質な黒糖製造に利用できる。
- キーワード:サトウキビ、甘蔗糖度、早期高糖、秋収穫
- 担当:九州沖縄農研・バイオマス・資源作物開発チーム
- 代表連絡先:電話0997-25-0100
- 区分:九州沖縄農業・畑作、作物
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
九州や四国などの西南暖地において、サトウキビ由来の健康食品である黒糖を核とした地域興しに取り組む例が現れている。こうした地域は、サトウキビ主産地である南西諸島に比べ、サトウキビの生育に適した高温の期間が短く、糖度の上昇に必要な期間も短い。このため、従来の品種では、同地域の収穫期である11月までに十分な糖度を得られないことが多く、黒糖原料としての品質が不安定であるという大きな問題を抱えている。この問題の解決に向け、従来にない極早期高糖性で、かつ黒糖製造適性に優れる品種が強く要望されている。
成果の内容・特徴
- 「KY96T-547」は、早期高糖性で多収の「NiF8」を種子親に、萌芽性、分げつ性に優れる多収の「Ni9」を花粉親にして1994年に交配を行い、1996年に実生選抜を実施して以降、早期高糖性と株出し萌芽性を重視して選抜した系統である。
- 糖度上昇が早く、甘蔗糖度の高い極早期高糖性を特徴とし、10月収穫が可能である。(表1)。
- 温暖な九州本土において十分な収量が得られる(表1)また、ブリックスは、良質黒糖製造の目安となる18%以上に達する(表1)。
- 株の萌芽が良く、株出しでの可製糖量は「NiF8」よりも多い。(表1)。
- 製造した黒糖の品質は色彩(淡緑色)などの点において「NiF8」よりも評価が優れる(図2)。
- 葉焼け病およびさび病類に抵抗性である(表2)。
成果の活用面・留意点
- 西南暖地および南西諸島での栽培に適し、四国、九州および南西諸島の一部での栽培が予定されている。(当面の作付け見込み面積10ha)
- 既存のサトウキビ栽培地域では、収穫・製糖時期を早めることができる。
- 黒穂病に罹病しやすいので、多発地帯での栽培は避け、罹病した場合はすみやかに罹病個体を処分する。
- 痩せ地では生育が劣り、株出し栽培で茎が細くなりやすいので、堆肥投入などの十分な肥培管理を行う必要がある。
具体的データ




(寺内方克)
その他
- 研究課題名:暖地・南西諸島の農業を支えるさとうきび等資源作物の低コスト安定生産技術の開発
- 中課題整理番号:211g
- 予算区分:基盤、委託プロ(加工)
- 研究期間:1996 ~ 2010 年度
- 研究担当者:寺内方克、氏原邦博、外間康洋(沖縄農研セ)、境垣内岳雄、服部太一朗、石川葉子、松岡誠、伊禮信、寺島義文、杉本明、下田聡、前田秀樹、杉浦誠