黒穂病抵抗性に優れる多収の飼料用サトウキビ新品種候補「KR98-1003」

要約

飼料用サトウキビ新品種候補「KR98-1003」は、黒穂病抵抗性に優れ、既存品種の「KRFo93-1」と同程度の多収が得られる。「KR98-1003」の活用により、奄美地域以南の黒穂病発生地域においても、飼料用サトウキビによる粗飼料増産が実現できる。

  • キーワード:飼料用サトウキビ、黒穂病、多収
  • 担当:九州沖縄農研・バイオマス・資源作物開発チーム
  • 代表連絡先:電話0997-25-0100
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

新規の飼料作物として飼料用サトウキビが開発され、鹿児島県熊毛地域および九州南部地域での普及が進みつつある。しかし、現行唯一の品種である「KRFo93-1」は重要病害の黒穂病抵抗性が「中」であるため、黒穂病が発生する奄美地域以南での普及には適さない。そこで、奄美地域以南での栽培を可能とする、黒穂病抵抗性に優れる多収の飼料用サトウキビ新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「KR98-1003」は、製糖用品種「NiF8」を種子親、サトウキビ野生種を用いた種間交配系統「KRSp93-26」を花粉親に用いて種子を得、1998年に実生選抜を実施して以降、黒穂病抵抗性と株出し(再生草)での収量性を重視して選抜した系統である(図1)。
  • 「KR98-1003」の黒穂病抵抗性は「NiF8」と同程度の「強」であり、「KRFo93-1」よりも優れ、さび病類抵抗性も「強」である(表1)。また、株出しでの萌芽が旺盛で分げつ性が優れる(表1)。
  • 種子島(育成地)、徳之島(現地)における年間生草収量および年間乾物収量は飼料用サトウキビ「KRFo93-1」と同程度で多収である(図2)。
  • 「KR98-1003」の飼料成分は「KRFo93-1」と同程度である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 黒穂病抵抗性に優れるため、これまで黒穂病発生の懸念から「KRFo93-1」の適用が困難であった奄美地域以南での活用が特に期待される(作付け見込み面積は100ha)。
  • 「KRFo93-1」と比較して発芽および低温伸長性がやや劣るため、雑草による生育抑制を受けないように留意する。
  • 飼料用サトウキビ向けの年2回収穫体系での栽培が推奨される。

 具体的データ

表1.「KR98-1003」の特性概要

図1.「KR98-1003」の草姿

図2.「KR98-1003」の年間生草収量および年間乾物収量

表2.「KR98-1003」の飼料成分(乾物中%)

(境垣内岳雄)

その他

  • 研究課題名:暖地・南西諸島の農業を支えるさとうきび等資源作物の低コスト安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:211g
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:1998~2010 年度
  • 研究担当者:境垣内岳雄、寺内方克、松岡誠、寺島義文、服部太一朗、石川葉子、服部育男、杉本明、氏原邦博、伊禮信、下田聡