沖縄本島ジャーガル地帯における秋冬作レタス安定生産のための新栽培体系

要約

安定生産を目的として開発した、牛ふんせん定残さ混合堆肥、LPコート主体の全量基肥施用、マルチ内かん水の個別技術を体系化することで、大玉化するとともに玉揃いが向上し、約2~4割程度の増収が図られる。

  • キーワード:レタス、牛ふんせん定残さ混合堆肥、マルチ内かん水、ジャーガル
  • 担当:九州沖縄農研・南西諸島農業研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-1150
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

  沖縄本島南部地域は都市近郊野類の重要な生産地帯であるが、この地域に分布するジャーガル(軟岩型普通陸成未熟土壌石灰質)は粘質で緻密なため降雨後の作業性が著しく低く、また、有機質に乏しい。この地域のレタス作は秋、冬、春と3作体系であるが、秋冬作ではチップバーン(生理障害)が発生しやすく、また、小玉となりやすいことが問題となっている。そこで、安定生産のために開発した個別技術の組合せ特性を検討し、心土破砕(平成18年度研究成果情報)、ジャーガルに適した牛ふんせん定残さ混合堆肥(平成17、20年度九州沖縄農業研究成果情報)三作全量基肥施用法(平成17年度九州沖縄農業研究成果情報)、マルチ内かん水(平成17、18年度九州沖縄農業研究成果情報)の技術改良を加えながら体系化を図り、レタスの持続的な栽培管理技術を構築する。
 

成果の内容・特徴

  • 重粘で排水性の悪い圃場では、排土型心土破砕機による心土破砕を実施する。
  • 牛ふんせん定残さ混合堆肥は難分解性の木質系副資材の割合が高く、肥効の発現が極めて緩慢であるため、秋冬レタスでの肥効を得るために、3.5t/10aを春施用(夏作緑肥前施用)する。また、春施用することで作業の平準化が図られるとともに、降雨に左右されやすい定植前作業の計画的実施に寄与できる。
  • 牛ふんせん定残さ混合堆肥施用を考慮した被覆尿素入り窒素肥料を主体とした新しい一括全量基肥(N-40、K2-0、P2O5-22.5kg/10a)施用法では、マルチ内かん水との組合せで、安定的に養分が溶出して生育が安定し、地下への養分溶脱も少ない(図1)。
  • レタスのマルチ内かん水で、生育が促進されるとともに斉一性が高まり、3Lサイズ(10kg箱14玉入り)以上の大玉の割合が増加するとともに 、商品化率が向上する。かん水チューブの敷設位置が株直下の畦中央部では定植、収穫の妨げとなるため、敷設位置を畦肩部とすることで、収量・品質の向上を維持しつつ作業性が改善される(表1)。
  • 株張りにより大玉となる個体の予測判別が可能で、冬作におけるその目安は、定植後1週目で約7cm、3週目で約15cm、 結球開始時の5週目で約30cmである(第2図)。収穫適期より遅れると、チップバーンが多発するおそれが著しく高まるので注意する。
  • レタス栽培において、これらの技術を体系化することで、生育が斉一化や大玉化、玉揃いが向上し、約2~4割程度の増収が図られる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 沖縄本島南部地域のジャーガル土壌でのレタス作に適用できる。
  • プラソイラや沖縄型堆肥は他の園芸作物にも適用できる。
  • マルチ内かん水では生育が促進されるので、チップバーンを回避するために収穫遅れに注意する。

具体的データ

図1 新栽培体系実証圃場での 土壌中硝酸態窒素濃度の推移

図2 大玉収穫のためのレタスの 生育予測曲線(冬作)

表1 マルチ内かん水におけるチューブの位置が、収量・品質に及ぼす影響(2006 年秋作)

図3 新栽培体系実証圃場における レタスの収量(2007 年秋作) (各区5a、全量調査)

(生駒泰基)

その他

  • 研究課題名:南西諸島における島しょ土壌耕地の適正管理、高度利用を基盤とした園芸・畑作物の安定生産システムの開発
  • 中課題整理番号:214v
  • 予算区分:基盤、交付金プロ(沖縄広域連携)
  • 研究期間:2003 ~ 2010 年度
  • 研究担当者:生駒泰基、大和陽一、田中章浩、荒川祐介、高嶺典子、森田猛治(元沖縄県農研セ)、久場峯子(沖縄県農研セ)、比嘉明美(沖縄県農研セ)、真境名元次(沖縄県庁)