サツマイモの親いも肥大を抑制する容器収納いも付き苗移植栽培法
要約
直播適性の低い品種「コガネセンガン」の種いもを容器に入れて出芽させ植え付けることで、種いもの再肥大を物理的に抑制でき、つる根いもが形成され肥大するので慣行の挿苗栽培と同等の収量が得られる。
- キーワード:サツマイモ、コガネセンガン、容器、親いも肥大、種いも再肥大、容器収納いも付き苗、移植栽培、直播栽培
- 担当:九州沖縄農研・九州畑輪作研究チーム
- 代表連絡先:電話0986-24-4279
- 区分:九州沖縄農業・畑作
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
省力技術として期待されている種いもを直接圃場に植え付けるサツマイモ直播栽培は、親いも肥大の抑制と圃場出芽の斉一化が課題となっている。焼酎原料用の主力品種「コガネセンガン」は、形状・品質が劣る親いもの肥大が起きやすく、直播適性が低い。
そこで、種いもを容器の中で育苗して出芽させた後、容器ごと圃場に植え付け、親いも肥大を物理的に抑制する方法を開発するとともに、容器の使用が収量に及ぼす影響を明らかにする。
なお、ここでは植え付け時のいもを「種いも」、収穫調査時の種いも由来のいもを「親いも」と呼び、栽培期間中に新しく形成される「子いも」と区別する。
成果の内容・特徴
- 「コガネセンガン」の種いもを横に2分割してプラスチック容器に培土とともに植え付け、水やりをしながら育苗すると、容器の中の種いもより萌芽し容器上部へと出芽した苗が得られる(以下、「容器収納いも付き苗」と呼ぶ)(図1、図2)。
- 容器収納いも付き苗を圃場に約20cmの深さに植え付け栽培すると、種いもの再肥大(親いも肥大)は容器により物理的に抑制され、つる根いもが形成され肥大する(図3A)。
- 容器を用いないで50穴深型セルトレーで育苗する「2分割いも付き苗」(図2のいも付き苗育苗)をセルトレーから抜き取り植え付けた区(以下、いも付き苗区)と比較して、この容器収納いも付き苗移植栽培法は親いも肥大を物理的に抑制する(図3B、C)。
- 容器収納いも付き苗区の子いもの収量は慣行の挿苗栽培区と同等で(図4A)、親いも生重は親いもが肥大するいも付き苗区と比較して減少する(図4A、B)。また、株当たり子いも数は挿苗栽培区と同等である(図4C)。
成果の活用面・留意点
- 直播栽培の課題の一つである親いも肥大については、この方法により確実に抑制できるので、今後の直播栽培に関連する技術開発における参考情報となる。
- 供試した容器は、ここでは便宜的にポリプロピレン製またはポリエチレン製の100ccサンプル瓶を用いており、収納可能な種いもの大きさが容器の口径により制限されたので、より適切な形状の検討を要する。材質については、耐久性などの検討を要する。
- 子いもの収量性については、年次変動、圃場条件の違い、肥培管理条件の影響があるので、引き続き検討を要する。
- まれに容器底面の水抜き穴から出た根が親根いもとなり肥大することがある。
- 収穫時に圃場から容器を回収する必要がある。
具体的データ




(安達克樹)
その他
- 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
- 中課題整理番号: 211k.9
- 予算区分: 基盤
- 研究期間: 2009~ 2010年度
- 研究担当者: 安達克樹、大嶺政朗、杉本光穂、石井孝典、新美洋、鈴木崇之