月産500本/m2の苗生産が可能なサツマイモ小苗養液育苗システム
要約
切断いもの頭部(30~50g)を50穴セルトレイで育苗し一斉(全刈り)採苗後、茎長10cm以上の小苗は本ぽに植付け、茎長5~10cmの苗は128穴セルトレイで挿し苗育苗する。種いも育苗と挿し苗育苗の組み合わせにより小苗を月産500本/m2生産できる。
- キーワード:サツマイモ、小苗、育苗、大量生産、切断いも、一斉採苗
- 担当:九州沖縄農研・九州畑輪作研究チーム
- 代表連絡先:電話0986-24-4277
- 区分:九州沖縄農業・畑作、共通基盤・作業技術
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
サツマイモ栽培では育苗から挿苗までの作業時間が全体の作業の約半分を占め、規模拡大に伴い選択採苗作業の省力化が課題となっている。一斉採苗作業では省力化は図れるが、挿苗に適さない茎長が短い苗が大量に生じる。生産性を高めるには短い苗を挿し苗で再育苗する必要があるが、床苗では活着率が低くセルトレイ等を用いて育苗する必要がある。
そこで、セルトレイを用い密植にした種いも育苗と挿し苗育苗を組み合わせた一斉採苗を想定した大量養液育苗システムの開発を行い、小苗の月産500本/m2を目指す。
成果の内容・特徴
- 育苗施設内には育苗ベットを立ち姿勢で作業がしやすい高さに設置する。暖房機により室温は25°C以上に維持し、35°C以上になると換気を行う。また、セルトレイ内培土の地温はヒータにより25°Cを維持する。給水はエブアンドフローとし1日30分の給水を2回行う。液肥の成分は窒素26mg/L、リン酸12mg/L、カリ41mg/Lである。(図1、表1)
- 60~100gのいもを輪切り方向に2分割して頭部を種いもとする。育苗当初の1週間はセルトレイ表面を黒マルチで被覆し高湿度を維持する。(図1)
- 使用するセルトレイは 種いも育苗の場合50穴トレイ(セルサイズ55×55mm、深さ62.5mm、栽植密度 278個/m2)で、挿し苗育苗の場合128穴トレイ(セルサイズ30×30mm、深さ45mm、栽植密度710本/m2)である。(表1)
- 種いも育苗は約1ヶ月で一斉採苗を行い茎長10cm以上の苗は本ぽに植え付け、5~10cmの苗はセルトレイで挿し苗育苗し10cm以上の小苗に生長させてから一斉採苗し本ぽに植え付ける。 (図2)
- 種いも育苗では適正苗率は70%以上であり、挿し苗ではほぼ100%活着し採苗時の適正苗率もほぼ100%である。苗床育苗の苗生産(月産100~200本/m2)に対して、本システムの小苗の生産量は2倍以上の月産500本/m2である。(表2)
成果の活用面・留意点
- 本技術はサツマイモ栽培を中心とした大規模畑輪作や苗生産に取り組んでいる農家や生産法人を対象とする。
- 茎長10~15cmのサツマイモ苗は半自動野菜用移植機を利用した本ぽへの植え付けが可能である。
- 切断いもの尾部による育苗は、萌芽までの日数が長くなり、なかには萌芽せず欠株になる場合もある。
- 本報告で使用した品種は「コガネセンガン」である。
具体的データ




(杉本光穗)
その他
- 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
- 中課題整理番号: 211k .9
- 予算区分: 基盤
- 研究期間:2006~2010 年度
- 研究担当者:杉本光穗、安達克樹