焼酎廃液濃縮液を活用した春ダイコン-焼酎原料用サツマイモ畦連続使用栽培

要約

春ダイコン収穫後、マルチ被覆畦を連続使用してサツマイモ「コガネセンガン」の栽培が可能であり、牛ふん堆肥連用畑で春ダイコン作付前に焼酎廃液濃縮液を施用すると、それ以降無施肥で春ダイコン、サツマイモともに慣行と同程度の収量を得ることができる。

  • キーワード:畦連続使用、サツマイモ、ダイコン、焼酎廃液濃縮液、牛ふん堆肥、中高平高畦
  • 担当:九州沖縄農研・九州畑輪作研究チーム、土壌環境指標研究チーム
  • 連絡先:電話 0986-24-4276
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類技術・参考

背景・ねらい

作物別、作型別で設定されている肥培管理法を、輪作体系の中で共通化、合理化することにより、コスト、労力および環境負荷が軽減されるとともに、耕地利用率が向上し収益性が一層高まることが期待される。これまでに南九州の基幹畑作物である焼酎原料用サツマイモ「コガネセンガン」は、ダイコン等野菜作に用いる中高平高畦で慣行の高畦と同等の生産性と作業性が得られることを確認した。さらなる合理化と畑の高度利用を目指し、春ダイコン収穫後の中高平高畦にサツマイモを直接挿苗する畦連続使用栽培技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 春ダイコン収穫後にマルチ被覆した中高平高畦を連続使用してサツマイモを栽培できるが、堆肥無施用畑(表1)では収量が慣行栽培に比べて低い(表2)。慣行栽培の養分吸収量との比較により、サツマイモ低収の原因として春ダイコンが施肥窒素およびカリを吸収しサツマイモ作に持ち越さないこと、土壌からサツマイモへの窒素およびカリの供給不足があげられる(表2・表1)。
  • 焼酎廃液濃縮液を春ダイコン作付前に施用すると、春ダイコン作付後の無肥料・畦連続使用のサツマイモに対し、カリを主とした肥効を示し、収量が高まる(表3)。
  • 春ダイコンに対する焼酎廃液濃縮液の窒素肥効率は36%で、化学肥料窒素15kg/10aと同等の肥効を得るのに必要な施用量は1.7t/10aと計算される(表3)。作期の地温が低い春ダイコンに対しては牛ふん堆肥の窒素肥効は極めて小さい(表3)。
  • 牛ふん堆肥連用畑(表1)で春ダイコン作付前に焼酎廃液濃縮液1.7t/10aを施用することにより、春ダイコン、無肥料・畦連続使用のサツマイモいずれも窒素およびカリ吸収量が慣行栽培と変わらず、収量も同程度得られる(表4)。

成果の活用面・留意点

  • 南九州の黒ボク土畑での結果であり、牛ふん堆肥連用畑における畦連続使用栽培は有機JAS認証圃場の結果である。
  • サツマイモ作付前の作業労力が削減される上、冬作からサツマイモ作へ期間を置かずに移行できるため、大規模畑作経営でサツマイモを含めた年2作体系が容易になる。
  • 焼酎廃液濃縮液の施用には畜産用バキュームカーが適する。
  • ダイコン根の障害を防ぐため焼酎廃液濃縮液施用から播種まで3週間以上空ける必要がある。
  • サツマイモ生育初期にダイコン跡穴からの雑草発生を抑制するために、黒マルチを使用するとともにダイコンの穴径を最小限とする(5cm以下)。
  • 地温はダイコン跡穴の影響で新規畦立てマルチに比べ約2°C低いので、サツマイモを早植えする場合は活着促進と初期生育確保のために穴を塞ぐ方法を検討する必要がある。

具体的データ

表1 ダイコン作付前の土壌理化学性(深さ0~15cm)

表2 堆肥無施用畑におけるダイコン・焼酎用サツマイモ 畦連続使用栽培の収量および養分吸収量

表3 ダイコン・焼酎用サツマイモ畦連続使用栽培下の 焼酎廃液濃縮液の肥効

表4 牛ふん堆肥連用畑におけるダイコン・焼酎用サツマイモ 畦連続使用栽培の収量および養分吸収量

(新美洋)

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 中課題整理番号:211k.9
  • 予算区分 :交付金プロ(日本型有機農業)、基盤
  • 研究期間 :2006~2010年度
  • 研究担当者:新美洋、鈴木崇之、久保寺秀夫