夏季周産期牛で血中NEFA濃度および乳成分はTDN充足率推定の指標となる

要約

夏季周産期乳牛において、分娩10日前から分娩後3週間の期間ではTDN充足率と血漿中NEFA濃度との間に高い負の相関があり、分娩1週間後ではTDN充足率と乳脂肪率との間に高い負の相関が、乳糖率との間に高い正の相関がある。

  • キーワード:高温環境、周産期、TDN充足率、血漿中NEFA、乳成分
  • 担当:九州沖縄農研・暖地温暖化研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7748
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(大家畜)、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

乳牛において、分娩と泌乳が始まる周産期(分娩前後各3週間)は内分泌、栄養代謝の変化が大きいことから、乳牛の状態に応じた適切な栄養管理を行うことが求められる。特に飼料摂取量が減少する高温環境下においては、乳生産性向上や代謝病予防のために、周産期乳牛の栄養状態を的確に把握し、対策を行うことが重要となる。そこで、周産期乳牛のTDN充足率と血液成分および乳成分との関係について明らかにし、TDN充足率を推測できる成分を提示する。

成果の内容・特徴

  • 高温環境下(平均気温:27.7°C、平均相対湿度:79.3%)において、分娩10日前では、血漿中NEFA濃度とTDN充足率との間には高い負の相関(R=-0.93)が認められる(図1)。
  • 高温環境下(平均気温:27.6°C、平均相対湿度:80.2%)において、血漿中NEFA濃度とTDN充足率との間には、分娩1週間後(r=-0.67),2週間後(r=-0.61)および3週間後(r=-0.77)それぞれに、高い負の相関が認められる(図2)。
  • 乳脂肪率とTDN充足率との間には、分娩1週間後においてのみ高い負の相関(r=-0.83)が認められる(図3)。
  • 乳糖率とTDN充足率との間には、分娩1週間後においてのみ高い正の相関(r=0.91)が認められる(図4)。
  • 分娩1週間後における乳脂肪率および乳糖率とTDN充足率とは、次式の関係がある。TDN充足率(%)=-3.5×乳脂肪率(%)+32.1×乳糖率(%)-63.4 (R2=0.87)
  • 以上より、夏季高温下の周産期乳牛において、血漿中NEFA濃度または乳脂肪率、乳糖率は、TDN充足率を推測するための指標として利用できる。

成果の活用面・留意点

  • 高温環境下において、周産期乳牛の栄養状態を把握するための参考データとなる。
  • 代謝プロファイルテスト等で得られたデータを解析する際の参考となる。
  • 高温環境下で分娩した経産牛において得られたデータである。
  • 分娩前はTMR(TDN64.2~68.4%、CP13~13.3%)をTDN要求量の1.2倍を上限とし自由採食させ、分娩後はTMR(TDN70.9~73.2%、CP14.0~16.0%)を自由採食させた時のデータである。

具体的データ

図1 分娩10 日前における血漿中NEFA濃度とTDN 充足率との関係

図2 分娩後3 週間の期間における血漿中NEFA 濃度とTDN 充足率との関係

図3 分娩後3週間の期間における乳脂肪率とTDN 充足率との関係

図4 分娩後3週間の期間における乳糖率とTDN 充足率との関係

(神谷裕子)

その他

  • 研究課題名:気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 中課題整理番号:215a.3
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010 年度
  • 研究担当者:神谷裕子、田中正仁、鈴木知之
  • 発表論文等:神谷ら(2007) 西日本畜産学会報50:57-62
    神谷ら(2010) 日本暖地畜産学会報53(2):165-173