サツマイモでん粉廃液から調製したサツマイモペプチドの脂質代謝改善作用

要約

サツマイモでん粉廃液から調製したサツマイモペプチドは、マウス体内で血中の中性脂肪やLDLコレステロールの増加抑制作用および臓器への脂肪蓄積抑制作用を示す。サツマイモペプチドを摂取させると、血中レプチンの増加が抑制される。

  • キーワード:サツマイモ、ペプチド、でん粉廃液、コレステロール、中性脂肪、レプチン
  • 担当:九州沖縄農研・九州バイオマス利用研究チーム
  • 代表連絡先:電話0986-24-4278
  • 区分:バイオマス、九州沖縄農業・フードシステム
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

サツマイモのでん粉製造工程において排出されるでん粉滓や廃液の処理が問題となっており、処理費や環境負荷の軽減に寄与する有効利用方法が求められている。でん粉廃液中には、タンパク質やポリフェノールなどの有用成分が含まれる。本研究では、でん粉廃液に含まれるタンパク質からペプチド含有物(サツマイモペプチド)を調製し、その機能性作用(脂質代謝改善作用)を評価する。

成果の内容・特徴

  • サツマイモペプチドは、サツマイモでん粉廃液から濃縮、タンパク質変性沈殿、酵素処理および精製の工程を経て調製される。サツマイモ原料50kgあたり約0.6kgのペプチドが得られる(図1)。
  • サツマイモペプチド添加飼料を28日間摂取したマウスでは、血中の中性脂肪およびVLDL、LDLコレステロール{特に超悪玉コレステロールと言われるsmall dense LDL (リポ蛋白質サブクラスG11-13)に含まれるコレステロール}が対照(高脂肪食)群より低い(図2)。
  • サツマイモペプチドを摂取したマウスでは、餌摂取量は低下しないが、体重、肝臓重量、腸間膜脂肪重量および精巣上体周囲脂肪重量が対照群より有意に低い。また、脂肪肝の程度もペプチド摂取量が多いほど軽い(表1)。
  • サツマイモペプチド摂取群では、血中レプチン濃度の増加が抑制される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はサツマイモでん粉製造企業や健康食品を扱う企業等により活用できる。
  • サツマイモペプチドは、高脂血症予防や肥満予防のための機能性食品素材としての利用が期待できる。

具体的データ

図2 サツマイモペプチドを28 日間摂取したマウス血中の中性脂肪(A)およびコレステロール(B)

表1 サツマイモペプチドを28 日間摂取したマウスの脂肪蓄積低減作用

図1 サツマイモペプチドの調製

図3 サツマイモペプチド摂取マウスの血中レプチ ン濃度の変化 **対照群に対して1%水準で有意差あり

(倉田理恵)

その他

  • 研究課題名:暖地における畑作物加工残さ等地域バイオマスのカスケード利用・地域循環システムの開発
  • 中課題整理番号: 411d
  • 予算区分:委託プロ( バイオマスモデル)
  • 研究期間:2007?2009 年度
  • 研究担当者:倉田理恵、石黒浩二、嶋田義一( 鹿児島農加セ) 、久米隆志( 鹿児島農加セ)