動態モデルから推定した麦作雑草カズノコグサの埋土種子を低減する耕種操作

要約

カズノコグサの埋土種子動態は、播種前出芽個体の防除と土壌処理除草剤の効果に強く影響を受け、埋土種子を減少させるためには、これら防除効果の向上に加え、麦類の播種時期を遅らせて種子生産量を減少させる必要があると推定される。

  • キーワード:カズノコグサ、埋土種子、動態モデル
  • 担当:九州沖縄農研・特命チーム員(雑草バイオタイプ・総合防除研究チーム)、九州水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-0675
  • 区分:共通基盤・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

麦作の強害イネ科雑草であるカズノコグサは、除草剤の効果が不安定なため、長期的に安定した防除技術の確立が望まれている。そのためには埋土種子動態モデルに基づいた長期的な発生予測が不可欠である。そこで本研究では、浅井の個体群動態モデル(平成20年度研究成果情報)を用いて、カズノコグサの埋土種子動態を明らかにするとともに、埋土種子の低減に効果的な耕種操作を推定する。

成果の内容・特徴

  • 現地多発圃場の埋土種子数を初期値とし、試験データを基に設定したパラメータ(表1)を利用した埋土種子の動態モデルの試算では、夏作物の種類にかかわらず、カズノコグサの埋土種子は年々増加する(図1A)。
  • 埋土種子の増減に強く影響を与え、かつ耕種操作で増減可能なパラメータは、耕起/非選択性除草剤による播種前出芽個体の防除効果(表1I)、土壌処理除草剤の防除効果(表1J)である(図1B)。
  • 埋土種子数を年々減少させるためには、除草剤の防除効果を向上させるだけでなく、播種時期を遅らせることで出芽本数(表1G、H)を減らし、種子生産量(表1N、O、Q、R)を減少させることが必要である(図1C)。

成果の活用面・留意点

  • 埋土種子の増減に強く影響を与えるパラメータは、動態モデルのパラメータ値を変化させて試算した結果から判断した。
  • 播種前出芽個体の防除には非選択性除草剤、土壌処理除草剤についてはカズノコグサに対して登録のある除草剤の利用が効果的である。
  • 今後、試算結果を基にした栽培管理を行ったカズノコグサまん延圃場において埋土種子の増減について検証が必要である。
  • 浅井の個体群動態モデルは、http://cse.narc.affrc.go.jp/masai/weedmodel.htmlで利用できる。

具体的データ

表1 動態モデルに利用したパラメータ値

図1動態モデルによるカズノコグサの埋土種子数の推定

(大段秀記)

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 中課題整理番号:211k.8
  • 予算区分:交付金プロ( IWM)
  • 研究期間:2007~2010 年度
  • 研究担当者:大段秀記、住吉正、小荒井晃、浅井元朗