ウリ類退緑黄化ウイルスのゲノム構造解析と近縁ウイルスとの類縁性

要約

ウリ類退緑黄化ウイルスのゲノムは2分節RNAであり、全長8,607塩基のRNA1と全長8,041塩基のRNA2からなる。本ウイルスは、Bean yellow disorder virusLettuce chlorosis virusおよび Cucurbit yellow stunt disorder virusに近縁である。

  • キーワード:ウリ類退緑黄化ウイルス、ゲノム、系統樹
  • 担当:九州沖縄農研・暖地施設野菜花き研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7730
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫(病害)、共通基盤・病害虫(病害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV)は、タバココナジラミにより媒介され、メロン、キュウリおよびスイカの葉に激しい黄化を引き起こす重要病害である。本ウイルスは、2004年頃初めて発生が確認された世界でも報告例のないクリニウイルスに属する新種ウイルスであるため、ウイルスゲノムを解読し、近縁ウイルスとの類縁関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • CCYVのゲノムは2分節1本鎖RNAであり、全長8,607塩基のRNA1と全長8,041塩基のRNA2からなる。
  • RNA1は4つの遺伝子をコードする(図1)。ORF1aの終始コドン(UAG)の上流に2つのウラシル塩基があり、他のクリニウイルスと同様にORF1bは+1フレームシフトにより転写されることが推定される。ORF2とORF3はそれぞれ約6kDaと約22kDaのタンパク質をコードするが、既知タンパク質や他のクリニウイルスとアミノ酸配列の相同性は認められず、機能は不明である。
  • RNA2は8つの遺伝子をコードする(図1)。アミノ酸配列の相同性からORF2が70kDa熱ショックタンパク質と相同性を示すタンパク質(HSP70h)、ORF4が細胞間移行タンパク質(p59)、ORF6およびORF7が外被たんぱく質(CP)およびマイナー外被タンパク質(CPm)であることが推測される。ORF1、ORF3、ORF5およびORF8の機能は明らかになっていない。
  • 他のクリニウイルスと同様にRNA1とRNA2の3'末端非翻訳領域の相同性が極めて高い(図2)。5'末端非翻訳領域は全く相同性が認められない。
  • HSP70hおよびCPのアミノ酸配列の相同性に基づく系統樹によると、CCYVはBean yellow disorder virus(BnYDV)、Lettuce chlorosis virus (LCV)およびCucurbit yellow stunt disorder virus(CYSDV)に近縁である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • CCYVのRNA1およびRNA2の全塩基配列は、それぞれアクセス番号AB523788およびAB523789によりDDBJから入手できる。
  • 本配列情報をもとに遺伝子診断法や血清診断法の開発が可能である。
  • BnYDV、LCVおよびCYSDVはいずれも日本での発生は確認されていない。
  • 現在、日本以外では、台湾および中国でCCYVの発生が報告されている。

具体的データ

図1 ウリ類退緑黄化ウイルスの物理地図

図2 CCYV RNA1 およびRNA2 の3’末端非翻訳領域の整列

図3 70kDa 熱ショックタンパク質(HSP)および外被たんぱく質(CP)のアミノ酸配列の相同性に 基づき作成したクリニウイルス属ウイルスの系統樹

(奥田充)

その他

  • 研究課題名:暖地における簡易施設等を活用した野菜花きの高収益安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号: 213d
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2006?2010 年度
  • 研究担当者:奥田充、岡崎真一郎( 大分県) 、山崎修一( 大分県) 、杉山充啓
  • 発表論文等:Okuda, M. et al. (2010) Host range and complete genome sequence of Cucurbit
    chlorotic yellows virus, a new member of the genus Crinivirus. Phytopathology 100: 560-566.