合成フェロモンを利用してホソヘリカメムシのダイズ圃場への侵入時期を把握できる

要約

ダイズ圃場に設置したホソヘリカメムシの合成フェロモンにはダイズの開花後に成虫が大量に誘引される。フェロモントラップの誘殺ピークと前後し圃場内の成虫密度が上昇することから、本誘引現象は、成虫のダイズ圃場への飛来・侵入時期を反映している。

  • キーワード:ホソヘリカメムシ、フェロモン、発生予察、ダイズ
  • 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
  • 代表連絡先:電話096-242-7732
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ホソヘリカメムシ雄成虫が放出するフェロモン成分はtetradecyl isobutyrate(以下14iBu)、(E)-2-hexenyl (E)-2-hexenoate(以下EE)および(E)-2-hexenyl (Z)-3-hexenoate(以下EZ)の3成分である(Leal et al., 1995)。これら3成分からなる合成フェロモン剤(14iBu:EE:EZ=1:5:1)が開発されているが、フェロモントラップでの誘引数と圃場での発生密度との関係が明らかでないため、発生予察には十分に利用されていない。そこで、ホソヘリカメムシ合成フェロモンを用いた発生予察への利用法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 播種時期の異なるダイズ2圃場に設置したホソヘリカメムシ合成フェロモントラップへのホソヘリカメムシ成虫の誘引数は、圃場Aでは開花12日後(8月24日)、圃場Bでは開花10日後(9月3日)に誘引ピークとなる一山型の消長を示す(図1)。
  • ダイズ圃場内では開花前にはホソヘリカメムシ成虫は見られなかったが、圃場Aでは開花10日後(8月22日)、圃場Bでは開花10日後(9月3日)からホソヘリカメムシ成虫が出現し、9月から10月にかけて密度が増加する(図2)。一方、幼虫は成虫数の増加とほぼ同じかやや遅れて増加する(図2)。
  • 合成フェロモンに誘引されたホソヘリカメムシ成虫の性比は、両圃場ともダイズの開花前は雄に偏っているが、開花後は雌成虫の割合が増加する(表1)。
  • 以上から、開花期の異なる圃場では開花期のずれに対応した合成フェロモンへの誘引ピークが認められ、さらに、誘引ピークの直前あるいは直後にダイズ圃場内のホソヘリカメムシ密度が上昇する。したがって、ダイズ圃場での合成フェロモンへの大量誘引現象はホソヘリカメムシ成虫、特に雌成虫のダイズ圃場への飛来・侵入を反映しているものと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、現在市販されている2成分系(14iBu:EE=1:2)の誘引剤にも適用できる。
  • ホソヘリカメムシの発生予察に活用され、それに基づく防除時期の決定が可能になる。
  • 合成フェロモントラップへの誘殺数と圃場密度の関係については、今後さらなるデータの蓄積による評価が必要である。

 具体的データ

図1.ホソヘリカメムシ合成フェロモントラップに誘殺された成虫数の推移

図2.ダイズ圃場におけるホソヘリカメムシ成・幼虫の密度推移

表1.合成フェロモントラップに捕獲されたホソヘリカメムシ成虫のダ イズ生長期別性比

(遠藤信幸)

その他

  • 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
  • 中課題整理番号:214h
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010 年度
  • 研究担当者:遠藤信幸、和田節、佐々木力也(富士フレーバー)
  • 発表論文等:Endo N. et al. (2011) Appl. Entomol. Zool. (DOI: 10.1007/s13355-011-0065-7)