イチモンジカメムシ合成フェロモン3成分は野外で雌雄成虫および幼虫を誘引する
要約
イチモンジカメムシフェロモン3成分の合成物は野外においてイチモンジカメムシの雌雄成虫および幼虫を誘引する。同フェロモンは秋期に発生する生殖休眠成虫に対しても誘引性を示す。
- キーワード:イチモンジカメムシ、フェロモン、発生予察、ダイズ
- 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
- 代表連絡先:電話096-242-7732
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
イチモンジカメムシは雄成虫がフェロモンを放出し、同種の雌雄成虫を誘引する(樋口,1999)。フェロモン成分としてβ-sesquiphellandrene(以下Sesq)、(R)-15-hexadecanolide(以下R15)および methyl (Z)-8-hexadecenoate(以下Z8)の3成分が室内試験により確認されているが(Leal et al., 1998)、その合成物に対する野外での誘引性は未確認である。また、本フェロモンの幼虫や休眠虫に対する誘引性は確認されていない。発生予察などの応用場面で利用するにあたっては、誘引源として必要な合成物の量や誘引対象を調べることが重要である。そこで、イチモンジカメムシフェロモンの合成物に対する野外での誘引性を調べる。
成果の内容・特徴
- イチモンジカメムシのフェロモン3成分(Sesq:R15:Z8=1:1:1)は、1mg、10mgを誘引源とした場合にはイチモンジカメムシに対して明瞭な誘引性は確認できないが、100mgでは雌雄成虫が誘引される(図1)。
- 夏期の非休眠時には、イチモンジカメムシ合成フェロモン(30mg)には雄成虫より雌成虫が多く誘引される(図1、表1)。
- イチモンジカメムシ合成フェロモン(30mg)は、秋期に発生する生殖休眠状態の雌雄成虫に対しても誘引性を示す(表2)。
- イチモンジカメムシ合成フェロモンは、幼虫(主に終齢幼虫)に対しても誘引性を示す(図1、表2)。
成果の活用面・留意点
- イチモンジカメムシ誘引剤の開発やフェロモンの機能を理解する上での基礎知見となる。
具体的データ



(遠藤信幸)
その他
- 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
- 中課題整理番号:214h
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010 年度
- 研究担当者:遠藤信幸、佐々木力也(富士フレーバー)、武藤進悦(富士フレーバー)
- 発表論文等:Endo N. et al. (2010) Environ. Entomol. 39(6): 1973-1979.