堆肥から分離した新種の高温耐性硝化細菌
要約
堆肥から分離したバチルス属細菌(T3株)は、高温耐性を持つ新種の硝化細菌である。この分離株を用いると、高温下の堆肥化過程で悪臭の原因であるアンモニアの揮散低減が期待できる。
- キーワード:堆肥、高温耐性、硝化細菌、アンモニア、バチルス属
- 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム(兼:土壌生物機能研究チーム)
- 代表連絡先:電話096-242-1150
- 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
家畜ふん尿の堆肥化過程において発生するアンモニアは悪臭の原因となっている。堆肥化過程では高温(50~70度)の状態が続くため、アンモニアの低減には高温耐性の硝化細菌の利用が有効であるが、その菌の堆肥からの分離および利用に関する研究報告はない。堆肥中の硝化細菌の生育に適した新規培地(Shimaya & Hashimoto (2008) Soil Sci. Plant Nutr. 54, 529- 533.)を用いて、堆肥から高温耐性の硝化細菌を分離し、その生理生化学性状を明らかにする。さらに、その分離株を堆肥材料へ添加し、アンモニア揮散低減効果を解析する。
成果の内容・特徴
- 牛ふん堆肥から分離したバチルス属細菌(T3株)は、クリーム色のコロニーを形成するグラム不定の桿菌であり(図1)、高温耐性(最適温度50度)で硝化活性を持つ(表1)。
- T3株は、16S rDNA塩基配列解析により同定を行った結果、既存株に対し99.8%の相同性を示し、Bacillus haloduransに帰属する菌と推定される。しかし、ソルビトールを資化すること、サリシン、メレチトースおよび2-ケトグルコネートを資化しない点の生理生化学性状が、B. haloduransの典型性状と異なる(表1)。
- T3株の新規性を見極めるため、B. halodurans とのDNA-DNAハイブリッド形成試験を行った結果、菌の相同性を示す値が70%以下であることから、T3株は新種と判断される。
- 牛ふん堆肥化試験において、堆肥化温度は、菌添加区(6.24 ± 0.15 Log CFU/gDM)および無添加区ともに1週目で70度程度まで上昇する。1週目の排気中のアンモニア濃度は、無添加区4042 mg/L、菌添加区2592 mg/Lであり、アンモニア濃度は36%減少する。2週目でも27%減少する(図2)。
成果の活用面・留意点
- 牛ふん堆肥化試験は、小型堆肥化装置「かぐやひめ(富士平工業株式会社)」を用い、菌添加区はT3株の培養液3Lを集菌して堆肥材料に添加した結果である。
- 分離したT3株は、アンモニアを酸化して悪臭を低減させるため、窒素成分が堆肥に蓄えられ、肥料価値の高い堆肥製造に活用できる。
具体的データ



(嶋谷智佳子)
その他
- 研究課題名:有機性資源の農地還元促進と窒素溶脱低減を中心にした農業生産活動規範の推進のための土壌管理技術の開発
- 中課題整理番号:214q.2
- 予算区分:基盤、研究強化費
- 研究期間:2006~2010 年度
- 研究担当者:嶋谷智佳子
- 発表論文等:Shimaya C, Hashimoto T (2011) Soil Sci. Plant Nutr. 57, 150 - 156.