ごま葉枯病に強いサイレージ用トウモロコシ一代雑種の新親品種「Mi102」

要約

サイレージ用トウモロコシの自殖系統「Mi102」(エムアイヒャクニ)は、中生の晩のフリント種で、ごま葉枯病抵抗性及び耐倒伏性に優れ、組合せ能力が高い。一代雑種品種の親品種として利用できる。

  • キーワード:トウモロコシ、自殖系統、ごま葉枯病抵抗性、飼料作物育種
  • 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
  • 代表連絡先:Mail Address Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

トウモロコシの栽培品種は、形質の固定した自殖系統どうしを交配した単交雑一代雑種(F1)である。F1には、収量などに雑種強勢が現われるほか、耐病性などには両親の形質が受け継がれるため、優良F1品種の育成には優秀な自殖系統の育成が不可欠である。九州地域向けの F1には、ごま葉枯病抵抗性と耐倒伏性が求められる。そこで、ごま葉枯病抵抗性と耐倒伏性が強く、組合せ能力が高いフリント種の自殖系統を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「Mi102」は、フリント種改良集団「MF95」から、ごま葉枯病抵抗性と耐倒伏性についての選抜と自殖により育成した自殖系統である。
  • 早晩性は「Mi44」よりやや遅く“中生の晩”に属する(表1)。
  • ごま葉枯病抵抗性及び紋枯病抵抗性はいずれも“強”である(表2)。耐倒伏性は“強”で、折損抵抗性は“強”である(表2)。
  • 採種性は、放任受粉下での採種量が実収量で18.5kg/a、F1採種栽培での種子親としての利用を想定した雌雄畦比3:1換算で13.9kg/aであり、フリント種の「Mi91」より少ない。花粉飛散程度は“やや不良~中”である(表1)。
  • 稈長と着雌穂高は高く、稈径は太い(表1) 。雌穂は円錐~円筒形で、粒列数は平均12.0列、粒は黄色で丸形である。
  • 本系統を片親とする単交雑F1組合せの平均乾物収量は、デント種との組合せでは同熟期の普及品種に近い水準にあり、組合せ能力は高い(表3) 。

普及のための参考情報

  • 普及対象 民間種苗会社、公設機関等。
  • 普及予定地域・普及予定面積等 暖地及び温暖地において、春播き用のトウモロコシ単交雑F1品種の花粉用親品種として利用される。
  • その他 「Mi102」を片親として民間種苗会社がF1品種を開発しており許諾されている。

具体的データ

表1 「Mi102」の一般的特性と採種性

表2 「Mi102」の耐病性および耐倒伏性

表3 「Mi102」を片親とする単交雑一代雑種の特性

(澤井 晃)

その他

  • 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
  • 中課題番号:120b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1995~2010年度
  • 研究担当者:澤井 晃、村木正則、池谷文夫、濃沼圭一、伊東栄作、江口研太郎
  • 発表論文等:澤井ら「Mi102」品種登録出願 2011年9月12日(第26305号)