久住高原の黒ボク土地帯における非アロフェン質土層の分布と層序

要約

大分県の久住高原の黒ボク土地帯では、地表から20ないし36cmまでの部分に、結晶性粘土鉱物に富み酸性が強い非アロフェン質の土層が広く分布するため、酸性矯正に留意した土壌管理を行う必要がある。

  • キーワード:非アロフェン質、黒ボク土、酸性、層序、分布
  • 担当:総合的土壌管理・暖地畑土壌管理
  • 代表連絡先:Mail Address Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

九州の黒ボク土の多くは非晶質・準晶質のアロフェン・イモゴライトを主要粘土鉱物とするアロフェン質の土層から成るが、大分県の久住山周辺には結晶性粘土鉱物に富む非アロフェン質土層が存在する(松山・三枝(1994)、2009年度九州沖縄農業研究成果情報(2010))。しかしその分布や層序について詳細な知見はない。非アロフェン質土層はアロフェン質土層に比べて酸性が強く、土壌管理に注意を要するので、久住地域内における土壌管理上の基礎的情報として同地域の非アロフェン質土層の分布と層序の詳細を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 久住高原西部の土壌断面(図2の地点1)では、黒色~黒褐色の多腐植質表層が地表下100cmまで連続し、50~70cmの部分に段原降下スコリアが、100cm以下にアカホヤが見られる(図1)。多腐植質表層の上部(0~36cm)の分析値(交換酸度Y1、選択溶解試験結果(Sio))は、日本の統一的土壌分類体系上の「非アロフェン質黒ぼく層」の要件を満たす。
  • 久住高原の9地点と久住山北方の飯田高原の1地点(図2)の全てで、黒色~黒褐色の多腐植質から腐植質の土層が32cmないし100cm以深まで連続する(図3)。多くの断面で、この土層の下部に段原降下スコリアと思われる風化礫が含まれる。
  • 久住高原東側の地点9以外では、土壌表面から20ないし36cmまでの部分(風化礫を含む土層の直上または1層を隔てて上)の分析値が「非アロフェン質黒ぼく層」の要件を満たす(図3)。その下はアロフェン質の土層である。
  • 非アロフェン質の土層の厚さが25cm以上の地点は「非アロフェン黒ぼく土」、25cm未満の地点は「アロフェン黒ぼく土」に土壌分類される(図2、図3)。前者は久住高原を横断する旧小国街道の北(山側)に分布している。いずれに分類される場合も、表土は非アロフェン質でpH(H2O)が5.0以下と酸性が強い土層なので、酸性矯正に留意した土壌管理が必要と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 久住地域における土壌管理の基礎的情報となる。
  • この土層は全炭素200 g kg-1以上と極めて腐植が多く緩衝能が高いため、酸性矯正には多量の石灰資材を要する。例えば地点2の表土(pH(H2O) 4.5)を6.5へ矯正するためには炭カル30t/ha(緩衝曲線法で算出。作土深15cm、容積重0.5として)と、アレニウス表から推定される量(15t/ha)の2倍が必要である。
  • 酸性矯正の必要性に加えて、アロフェン質の土層と同じくリン酸固定能の高さも問題となる。
  • 非アロフェン質土層の土壌生成過程に関しては今後解明する必要がある。

具体的データ

図1 久住高原の非アロフェン質黒ボク土の断面(地点1)図2 調査地域の非アロフェン質土層の分布と土壌分類(日本の統一的土壌分類体系による
図3 各地点の土壌断面層序(分類名は日本の統一的土壌分類体系による)

(久保寺秀夫)

その他

  • 中課題名:暖地畑における下層土までの肥沃度評価と水・有機性資源活用による土壌管理技術の開発
  • 中課題番号:151a3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006~2011年度
  • 研究担当者:久保寺秀夫、猪部巌(大分農林水産研指)、草場敬
  • 発表論文等:久保寺ら(2009)ペドロジスト、53(1):11-20