小麦赤かび病を適期に防除するための開花期予測システム

要約

小麦赤かび病の防除適期である開花期をリアルタイムのアメダスデータを使って毎日予測し、予測した結果をWeb上に公開するシステムである。西日本の小麦主要6品種について、簡単な操作で開花期の予測日を知ることができる。

  • キーワード:赤かび病、小麦、開花期、アメダス、無人ヘリコプター防除
  • 担当:食品安全信頼・かび毒リスク低減
  • 代表連絡先:電話 084-923-4100
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域、九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

小麦の赤かび病対策では、開花期における防除が重要である。しかし、開花期は年によって2~3週間異なり、開花期を予測する手法も無いため、無人ヘリコプター等による集団防除の日程調整がつかず適期防除を困難にしている。そこで、西日本の小麦主要品種について、気象データから開花期を予測する手法を開発する。さらに、予測結果をWeb上に公開するシステムを構築し、適期防除を可能にする。

成果の内容・特徴

  • 播種日から小麦赤かび病の防除適期である開花期(50%の穂が開花した日)の予測日を知ることができる。現在までは日長と実測の日平均気温(リアルタイムのアメダスデータ)、現在以降は日長と平年の日平均気温を使って予測する。
  • 開花期を予測できる品種は「農林61号」、「シロガネコムギ」、「チクゴイズミ」、「ニシノカオリ」、「ミナミノカオリ」、「ふくさやか」の6品種である。
  • 開花期の予測日はWeb上で公開され、リアルタイムのアメダスデータをもとに毎日更新される。
  • 開花期の予測日を得るまでの手順を示す(図1)。
    (1)http://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/meteo_fukuyama/WEB/wheat/index_mugi.html にアクセスする。
    (2)品種を選択する。
    (3)県を選択する。
    (4)アメダス観測点を選択する。
    (5)播種日毎に開花期が表示される。
  • 発育予測モデルでは誤差約3日(Root Mean Square Error)で開花期の予測ができ(図2、表1)、実用に耐えうる。
  • 開花2週間前の予測では、予測日以降の日平均気温が平年より1°C高いと開花は予測日より1日早まり、同様に2°Cでは3日、3°Cでは5日早まる(表1)。
  • 本システムの利用により、集団防除の日程調整や適期防除が可能となる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 小麦生産者、普及センター。
  • 普及予定地域・普及予定面積 「農林61号」、「シロガネコムギ」、「チクゴイズミ」、「ニシノカオリ」、「ミナミノカオリ」、「ふくさやか」を栽培している地域。68,000ha(2007年作付面積)。
  • その他 農林水産省消費・安全局から各府県に本システムの紹介あり。各府県の農業試験場や普及センターで利用実績あり。

具体的データ

図1 開花期の予測日を見るまでの手順図2 発育予測モデルの予測精度
表1 開花3週間前からの予測結果と誤差

(黒瀬義孝)

その他

  • 中課題名:かび毒産生病害からの食品安全性確保技術の開発
  • 中課題番号:180a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(生産工程)
  • 研究期間:2008~2011年度
  • 研究担当者:黒瀬義孝、丸山篤志、中島 隆、平八重一之
  • 発表論文等:Maruyama et al. (2010) J. Agric. Meteorol. 66:41-50