イネ紋枯病は水稲の白未熟粒発生を助長する

要約

イネ紋枯病の病斑高率と発病株の白未熟粒率の間には正の相関がある。薬剤防除によって発病を抑制すると、白未熟粒率が低下する。イネ紋枯病は水稲の白未熟粒の発生を助長する要因である。

  • キーワード:イネ紋枯病、温暖化、白未熟粒、病斑高率
  • 担当:気候変動対応・暖地病害虫管理
  • 代表連絡先:Mail Address Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

水稲では、近年の温暖化傾向に伴い、高温や日照不足条件下での登熟が原因とされる白未熟粒(図1)の発生が恒常化し、玄米外観品質を低下させている。また、温暖化に伴い、イネ紋枯病の多発生と生育後期の急速な病勢進展が問題となっている。イネ紋枯病が発病したイネでは同化能力の低下、養水分の吸収阻害等が知られていることから、イネ紋枯病が白未熟粒の発生に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • イネ紋枯病の病斑高率と白未熟粒率には正の相関が、病斑高率と整粒歩合には負の相関がそれぞれ認められる(図2)。
  • 紋枯病を対象とした薬剤処理区の白未熟粒率は、無処理区に比較して有意に低い(表1)。
  • 以上から、紋枯病は水稲の白未熟粒の発生を助長する要因である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、紋枯病と白未熟粒の発生低減を考慮した水稲の生産工程管理技術(GAP:Good Agricultural Practice)の開発に活用できる。
  • 紋枯病と白未熟粒率との関係は、複数年の試験で同様の結果が得られている。

具体的データ

図1 イネ品種「ヒノヒカリ」の白身塾粒(左)と整粒(右)表1 薬剤防除によるイネ紋枯病および白未熟粒の発生抑制
図2 イネ紋枯病斑高率と白未熟粒率ならびに整粒歩合との関係

(宮坂 篤)

その他

  • 中課題名:暖地多発型の侵入・新規発生病害虫の発生予察・管理技術の開発
  • 中課題番号:210d0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(気候変動)
  • 研究期間:2007~2011年度
  • 研究担当者:宮坂 篤、中島 隆、井上博喜、服部育男、吉田めぐみ、鈴木文彦、川上 顕、平八重一之
  • 発表論文等:1)宮坂ら(2009)九病虫研会報、55:13-17
    2)宮坂、中島(2010)植物防疫、64(5):301-303