高でん粉で醸造適性や貯蔵性が優れるカンショ新品種「コガネマサリ」

要約

カンショ系統「コガネマサリ」は「コガネセンガン」に比べ、原料重当たりの純アルコール収得量が高く、焼酎はすっきりとした香りで、甘く丸みのある味わいを特徴とする。いもの外観や貯蔵性に優れ、線虫抵抗性と黒斑病抵抗性を備える。

  • キーワード:サツマイモ、焼酎用、貯蔵性、線虫抵抗性、黒斑病抵抗性
  • 担当:ブランド農産物開発 ・ カンショ品種開発・利用
  • 代表連絡先:Mail Address Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

南九州地域における焼酎用の主力品種は「コガネセンガン」であり、香味のバランスが取れた酒質は実需者に高く評価され、多くの酒造メーカーで主力商品の原料として使用されている。しかし、いもの表面に条溝(縦溝)を生じ易く、トリミングの手間と原料歩留の低下、また、貯蔵性や線虫抵抗性が劣るなどの問題点を抱えている。実需者からは「コガネセンガン」より栽培特性等に優れた醸造適性の高い品種に対する要望が高まっていることから、いもの外観、貯蔵性や線虫抵抗性に優れた醸造適性の高い品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「コガネマサリ」は2002年に飼料・でん粉原料用の「スターチクイン」(母)と高でん粉多収の「九系236」(父)を交配し選抜した系統である(図1)。
  • 貯蔵性は“易”で「コガネセンガン」より優れる。いもの形状は“短紡錘形”で条溝    は「コガネセンガン」より少なく、外観は“やや上”である(表1)。
  • 醸造時の原料当たり純アルコール収得量が高い。焼酎は甘味、丸味があり、すっきり した香りが特徴である(表2)。
  • 標準無マルチ栽培での上いも重は「コガネセンガン」並かやや多い。でん粉歩留は「コガネセンガン」より4ポイント程度高い。長期透明マルチ栽培での上いも重は「コガネセンガン」に劣る(表3)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性および黒斑病抵抗性はいずれも“強”で「コガネセンガン」より優れる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 宮崎県で普及に移される予定である(当面の普及見込み面積20ha)。
  • つる割病抵抗性が“やや弱”なので、同病害の多発地帯では防除に努める。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性はSP1レースが優先の試験圃場での結果である。

具体的データ

表1  いもの特性、病害虫抵抗性、貯蔵性など
表2  焼酎醸造特性1)(宮崎県食品開発セ、平成20、21、23年)
表3  育成地および宮崎県における収量性
図1 コガネマサリの塊根

(境哲文)

その他

  • 中課題名:高品質・高付加価値で省力栽培適性に優れたカンショの開発
  • 中課題番号:320b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2002~2011年度
  • 研究担当者:境哲文、吉永優、甲斐由美、小林晃、片山健二、中澤芳則、熊谷亨