甘蔗糖度が高く収量の多い早期収穫向けサトウキビ新品種「KN00-114」
要約
サトウキビ新品種「KN00-114」は、甘蔗糖度が高く収量が多い。鹿児島県大島地域においては、通常の収穫期に加え、低糖度が問題となる早期(12月)の収穫にも適する。
- キーワード:サトウキビ、甘蔗糖度、早期高糖、早期収穫
- 担当:ブランド農産物開発・サトウキビ品種開発・利用
- 代表連絡先: Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
- 研究所名:九州沖縄農業研究センター・作物開発・利用研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
南西諸島では、台風干ばつの回避や作業競合の緩和のために、収穫の早期化が求められている。現在、大島地域では、「F177」、「NiF8」、「Ni17」、「Ni22」等の品種が栽培されているが、これらのうち「F177」は晩熟で、早期高糖とされる「NiF8」や「Ni17」であっても早期収穫には十分に対応できていない。
こうした背景の下、より早期高糖性を具えた「Ni22」の栽培面積が拡大しているが、「Ni22」は茎径が"細"と細く、脱葉性が"中"であり、収穫しにくいことが課題となっている。そのため早期収穫に適するだけでなく、収穫しやすい品種が求められている。
成果の内容・特徴
- 「KN00-114」は、南アフリカ糖業研究所で行われた「88F1903」と「MO-F」との交配に由来する。交配種子を日本に導入し、2000年に実生選抜を実施して以降、茎数と高糖性を重視して選抜した系統である(図1)。
- 「NiF8」に比べてやや細茎であるが、脱葉性は「やや易」で、耐倒伏性に優れ、機械収穫に適するほか、手刈り収穫も可能である(表1)。
- 黒穂病、葉焼病およびさび病類に抵抗性である(表1)。
- 原料茎の収量、甘蔗糖度、可製糖量は、春植え、株出しのいずれにおいても「NiF8」よりも高い(表2)。
- 徳之島における早期収穫での甘蔗糖度は「NiF8」よりも高く、大島地域では従来の収穫期よりも早い早期収穫に適する(表3)。
普及のための参考情報
- 普及対象(鹿児島県大島地域のサトウキビ生産者・製糖工場等)
- 普及予定地域・普及予定面積(鹿児島県大島地域・1,000ha)
- その他
1)鹿児島県が大島地域を対象に「F177」、「NiF8」、「Ni17」の代替品種として奨励品種に採用。
2)台風による折損が頻発する圃場での栽培は避ける。
3)収穫後の株出し処理をすみやかに実施することにより、茎数確保に努める。
具体的データ
(石川葉子)
その他
- 中課題名:新たな付加価値を持つ多用途サトウキビ品種の育成と高度利用技術の開発
- 中課題番号:320c0
- 予算区分:交付金、委託プロ(加工)
- 研究期間:1999~2011年度
- 研究担当者:石川葉子、寺内方克、境垣内岳雄、服部太一朗、松岡誠、氏原邦博、伊禮信、寺島義文、杉本明、小牧有三(鹿児島農総セ)、四藏文夫(鹿児島農総セ)、長井純一(鹿児島農総セ)、樋高二郎、(鹿児島農総セ)、藤﨑成博(鹿児島農総セ)、白澤繁清(鹿児島農総セ)、園田純也(鹿児島農総セ)、西裕之(鹿児島農総セ)、竹牟禮穣(鹿児島農総セ)、緒方寿明(鹿児島農総セ)
- 発表論文等:品種登録出願番号第26315号