暖地・温暖地向きの高消化性で紫斑点病に強いソルガム新品種「SUX109-1」
要約
「SUX109-1」は中生のソルゴー型ソルガムで高消化性(bmr-18)および紫斑点病抵抗性遺伝子(ds-1)を持っている。高消化性品種「秋立」に比べて紫斑点病が発生しやすい暖地・温暖地での適応性に優れ、再生性にも優れるため年間乾物収量がやや高い。
- キーワード:ソルガム、紫斑点病、高消化性、中生、飼料作物育種
- 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
- 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
- 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ソルガムでは、品質向上のため高消化性遺伝子(bmr)を利用している。しかし、育成された高消化性品種の多くは、病害虫の発生が甚だしい暖地・温暖地では、その特性を十分に発揮しているとは言えない。とくに、紫斑点病が激発した場合、収量および品質の低下が著しい。そこで、暖地・温暖地で適応性を高めるために紫斑点病抵抗性(ds-1)および高消化性遺伝子(bmr-18)を併せ持つ中生ソルゴー型ソルガム品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「SUX109-1」は子実型ソルガムの細胞質雄性不稔系統「那系MS-3A」を種子親とし、ソルガム自殖系統「03SK4 3-1-1」を花粉親とするソルゴー型の単交雑一代雑種である。
- 「SUX109-1」は、晩生品種「秋立」より約10日早く出穂し、"中生"に属する(表1)。暖地・温暖地では8月中旬までに1番草を収穫することで、2番草も晩秋に出穂する(図1)。
- 1番草の平均乾物収量は「秋立」対比103%、2番草の平均乾物収量は「秋立」対比154%、年間の平均乾物収量は「秋立」対比111%である(表1)。
- 地域別では、暖地の宮崎(雪印)および熊本(九州研)で乾物収量が「秋立」より多収、温暖地の千葉(雪印)で「秋立」並、寒冷地の長野で「秋立」よりやや劣る(図2)。
- 乾汁性は、乾性で、乾物率は「秋立」より高い(表1)。
- 紫斑点病抵抗性遺伝子(ds-1)を有しているため、病斑は認められない(図1、表1)。すす紋病抵抗性は「秋立」よりやや強い(表1)。
- 「秋立」と同じ高消化性遺伝子(bmr-18)を有し、推定リグニン含量および推定TDN含量は「秋立」並である(表1)。
- 初期生育は「秋立」より優れている。稈長および稈径は「秋立」並である。
- 刈り取り2週間後の再生性は「秋立」よりやや優れ、刈り取り2週間後の再生草丈は「秋立」より高い(表1)。
成果の活用面・留意点
- 暖地・温暖地に適し、紫斑点病が発生しやすい地域で能力を発揮できる。
- アブラムシが著しく発生した場合・地域、あるいは著しい発生が予想される場合・地域では、早めに収穫する。
具体的データ

その他
- 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
- 中課題番号:120b0
- 予算区分:交付金、委託プロ(国産飼料)
- 研究期間:2005~2012年度
- 研究担当者:高井智之、春日重光(信大)、我有満、桂真昭、山下浩、上床修弘、波多野哲也、近藤聡(雪印種苗)、野宮桂(雪印種苗)、小山内光輔(雪印種苗)、小槙陽介(雪印種苗)
- 発表論文等:2013年度に品種登録出願予定