春播き・晩播及び夏播き用サイレージ用トウモロコシ一代雑種の新親品種「Mi106」

要約

サイレージ用トウモロコシの自殖系統「Mi106」(エムアイヒャクロク)は、中生の晩のデント種であり、耐倒伏性とごま葉枯病抵抗性に優れ、組合せ能力が高く一代雑種品種の親品種として利用することができる。

  • キーワード:トウモロコシ、自殖系統、耐倒伏性、ごま葉枯病抵抗性、飼料作物育種
  • 担当:自給飼料生産・利用・飼料作物品種開発
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

サイレージ用トウモロコシの栽培品種は、一般に、形質の固定した自殖系統どうしを交配した単交雑一代雑種(F1)である。F1には、収量などに雑種強勢が現われるほか、耐病性などには両親の形質が受け継がれるため、優良F1品種の育成には優秀な親自殖系統の育成が不可欠である。春播き栽培では耐倒伏性とごま葉枯病に強いF1が必要であり、晩播、夏播き栽培では耐倒伏性で南方さび病に強いF1が必要である。そこで、春播き、晩播および夏播き用F1品種の親として、耐倒伏性・ごま葉枯病抵抗性・南方さび病抵抗性が強く、組合せ能力が高い自殖系統を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「Mi106」は、 デント種改良集団“RD98”から耐倒伏性とごま葉枯病抵抗性についての選抜と自殖により育成した自殖系統である。
  • 早晩性は「Mi102」「Mi62」とほぼ同じで“中生の晩”に属する(表1)。
  • ごま葉枯病抵抗性・紋枯病抵抗性・南方さび病抵抗性はいずれも“強”である(表2)。耐倒伏性は“強”である(表2)。
  • 採種量は、放任受粉下での実収量で18.2kg/a、F1採種栽培での種子親としての利用を想定した雌雄畦比3:1換算で13.7kg/aであり、「Mi102」よりやや多く、「Mi91」および「Mi62」より少ない(表1)。
  • 稈長と着雌穂高は「Mi91」「Mi102」「Mi62」より低く、稈径は中程度である(表1)。雌穂は円錐~円筒形で、粒列数は平均12.7列、粒は黄色で丸形である。
  • 「Mi106」を片親とする単交雑F1組合せの平均乾物収量は、フリント種との組合せでは同熟期の普及品種に近い水準にあり組合せ能力は高い(表3)。

成果の活用面・留意点

  • サイレージ用トウモロコシ F1品種の親品種として利用することができる。「Mi106」を片親として他法人がF1品種を開発しており、その採種のため「Mi106」が利用される。
  • ワラビー萎縮症抵抗性は弱いので、夏播き用の暖地向き単交雑 F1育成時の交配相手にはワラビー萎縮症抵抗性の強い系統を用いる必要がある。

具体的データ

 表1~3,図1

その他

  • 中課題名:水田・飼料畑・草地の高度利用を促進する飼料作物品種の育成
  • 中課題番号:120b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1998~2012年度
  • 研究担当者:澤井 晃、村木正則、池谷文夫、濃沼圭一、伊東栄作、江口研太郎
  • 発表論文等:2013年度に品種登録出願予定