暖地や温暖地の夏秋どり栽培に適した四季成り性イチゴ品種候補「久留米61号」

要約

「久留米61号」は、四季成り性で夏秋季の連続出蕾性と収量性に優れ、糖度が高く食味も良く、萎黄病・うどんこ病抵抗性を有する暖地、温暖地の夏秋どり栽培用品種候補である。

  • キーワード:イチゴ、夏秋どり栽培、四季成り性
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:電話 q_info@ml.affrc.go.jp、Fax:096-242-7769、Tel:096-242-7682
  • 研究所名:九州沖縄農業研究センター・水田作・園芸研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

わが国の夏秋季のイチゴは大部分を輸入に依存しているが、業務需要が堅調で価格が高く安定しており、良質な国産果実への要望が強いことから、夏秋どり栽培に適した生態的特性を持ち夏秋季に安定して果実生産できる四季成り性品種の育成が望まれている。現在、栽培されている四季成り性品種は、暖地や温暖地では秋季の収量低下等の問題があり、高標高地でも生産には適していない。そこで、夏秋季の草勢が強く、連続出蕾性と果実品質に優れ、暖地や温暖地の夏秋どり栽培に適した四季成り性の実用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「久留米61号」は、四季成り性で連続出蕾性に優れ果実硬度の高い「盛岡30号」を種子親に、四季成り性で連続出蕾性と果実品質に優れる「スイートチャーミー」を花粉親として交雑して2001年に得られた実生から選抜された。
  • 夏季の草勢は強く、草姿はやや立性で、草丈が高く、分げつ、果房当たり花数は「サマーベリー」より多く、「みやざきなつはるか」と同程度である。果房長は「みやざきなつはるか」と同程度である(図1、表1)。
  • ランナーの発生時期は、「みやざきなつはるか」よりやや遅く、発生数は「みやざきなつはるか」より少なく、「サマーベリー」と同程度である(表1)。
  • 暖地の夏秋季においても連続的に出蕾・開花するため、果房数が多い(表1)。
  • 収量は「サマーベリー」より多く、「みやざきなつはるか」と同程度以上で、特に秋季収量が多い(表2)。
  • 果実は円錐形で「サマーベリー」より小さく、「みやざきなつはるか」よりやや大きく、果皮色は橙赤~赤で光沢がある。硬度は「サマーベリー」、「みやざきなつはるか」と同程度である。糖度は「サマーベリー」と同程度で「みやざきなつはるか」よりやや高く、酸度はやや低く、香りは中、食味は比較的良好である(図1、表2)。
  • 萎黄病に対しては抵抗性、うどんこ病に対しては中程度の抵抗性、炭疽病に対しては「とよのか」と同程度の罹病性である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • ランナー発生数が少ないので、増殖は十分低温に遭遇した親株を用いる。
  • 果実がやや軟らかいので、適期収穫に努める。
  • 「サマーベリー」、「みやざきなつはるか」にないうどんこ病抵抗性を有するので、減農薬栽培が可能である。
  • 暖地や温暖地の低標高地での栽培では、パッドアンドファン冷却やクラウン部冷却などの高温対策技術を導入した太陽光利用型植物工場において、入れ替え容易な栽培槽や植え替え容易な栽培法の改良が必要であるが、一季成り性品種を用いた促成栽培と本品種を用いた夏秋どり栽培を組み合わせることにより、イチゴの周年栽培が可能となる。

具体的データ

 図1,表1~3

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題番号:141f0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(アシスト(施設園芸))
  • 研究期間:2001~2012年度
  • 研究担当者:沖村誠、曽根一純、北谷恵美、木村貴志、飛川みのり、壇和弘、日高功太
  • 発表論文等:沖村ら、品種登録出願(予定)